不動産売却は「瑕疵担保責任」の対策が重要!補修費用を払わないための3つの行動
2018.09.18投稿不動産を売買する際、「瑕疵担保責任」という用語が使われます。普段耳慣れない言葉なので、よくわかりませんよね。
この記事ではこんな悩みを解決します!
- 瑕疵担保責任とは何か?
- 瑕疵とは何か?
- どんな瑕疵がある?
- 瑕疵担保責任によって契約解除の可能性はある?
- 瑕疵担保責任の具体的な対策はある?
この記事では、不動産の売却における瑕疵担保責任の概要から、代表的な瑕疵の事例の紹介や、瑕疵担保責任に対する対策までをわかりやすく解説します。
また、記事の後半では、瑕疵担保責任についての有効な対策であるホームインスペクションに関する解説もあります。
ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
瑕疵担保責任とは「不動産の欠陥についての責任」のこと
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは、不動産の売買契約において、売主が売却する不動産の欠陥(=瑕疵)について追う責任のことです。
瑕疵担保責任は、雨漏りや水漏れ、シロアリの被害や土地に不要物が埋まっていたなど、売却時に売主も知らなかった隠れた瑕疵に対する責任です。
そのため売買契約時に現状説明書や重要事項説明書などを通じて、買主にきちんと説明されている欠陥は、瑕疵担保責任における瑕疵には該当しません。
例えば不動産の取引において
「二階の部屋は雨漏りする箇所があります」
「玄関のランプがつかないので取り替える必要があります」
と、売主から買主に瑕疵に関する説明があった場合、買主はそれらの欠陥を納得した上で購入します。
しかし、購入後にドアノブが回らなかったり、給湯器が壊れていたり場合、買主は説明されていない欠陥も引き受けることになります。
このような場合、売主はそれらの欠陥を知らなかったとしても、不動産の隠れた欠陥について責任があるので売主が修理等の保証をする義務があります。
このように隠れた瑕疵に対する売主の責任を、瑕疵担保責任といいます。
瑕疵担保責任は、無過失責任です。不動産の瑕疵について、売主が不注意や過失がなかったとしても、売主は瑕疵について責任を負います。
瑕疵の内容によっては、契約解除につながる可能性もあります。
これから不動産を売却する予定の人は、瑕疵担保責任について知らないと大きな損害を招く可能性がある点を認識しましょう。
瑕疵とは「不動産の欠陥・不具合」のこと
瑕疵とは、不動産の欠陥・不具合のことです。
より正確には、本来備わっているべき性能や品質が欠けている状態を指します。
例えば、給湯器は通常どおりに作動する場合は給湯することができます。しかしお湯が出ない状態の場合、給湯器には本来備わっているべき性能が欠けている状態、つまり瑕疵(かし)があるといえます。
不動産の場合は、雨漏りや水漏れなど、表面上からはチェックしづらい瑕疵も数多くあります。
また、不動産取引における瑕疵は、物件の傷や不具合など物理的な瑕疵だけとは限りません。
次からは、不動産に関する瑕疵の種類について解説していきます。
不動産の瑕疵は「物理的・法律的・心理的・環境的」の4種類
不動産の瑕疵には、物理的瑕疵・法律的瑕疵・心理的瑕疵・環境的瑕疵の4つの種類があります。
それぞれの瑕疵の特徴と具体的な事例について確認していきましょう。
①物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、不動産物件の屋根や柱、設備など物理的なものについての瑕疵のことです。
不動産における瑕疵でもっとも多いのが「物理的瑕疵」です。
特に築年数を経ている物件の場合は、傷んでいる箇所や設備不良などの物理的瑕疵が予測されるので注意しましょう。
物理的瑕疵の具体的な例としては、
- 水漏れ
- 雨漏り
- シロアリで家の柱がボロボロになっている
- 耐震強度不足
などの事例が挙げられます。
②法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、建築基本法や都市計画法、消防法などの法令についての瑕疵のことです。法的瑕疵とも呼びます。
法律的瑕疵の具体的な例としては、
- 再建築ができない物件である
- 建築制限がある
- 建蔽率(けんぺいりつ)や容積率が建築基準法の基準をオーバーしている
などの事例が挙げられます。
③心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、買主にとって心理的な負担になるような瑕疵のことです。
心理的瑕疵の具体的な例としては、
- 取引対象の建物や土地において過去に殺人や自殺者が出ている
- 死亡事故や居住者の孤独死、自然死などが起きている
などの事例が挙げられます。
売主が心理的にどう感じるかではなく、買主が心理的にどう感じるかが心理的瑕疵のポイントです。
売主が気にしていなくても、買主によっては信じられないほどの瑕疵となる可能性もありえます。
心理的瑕疵は、具体的な線引きが難しい瑕疵といえます。
④環境的瑕疵
不動産取引における環境的瑕疵とは、これまで説明してきた物理的瑕疵、法律的瑕疵、心理的瑕疵とは異なり、売却した不動産そのものについての瑕疵ではありません。
環境的瑕疵とは、取引対象となる不動産の周辺環境に問題がある(瑕疵がある)という意味です。
環境的瑕疵の具体的な例としては、
- 不動産の周囲に暴力団事務所や宗教団体、産業廃棄物処理場といった施設がある
- 繁華街の賑わいや自動車の走行等による騒音や振動の問題がある
などの事例が挙げられます。
不動産の周辺環境は、売主が直接何かできることではありません。
環境的瑕疵に関しては、法的な規制はありませんが、環境的瑕疵とみなされるような施設が周辺にある場合は、売買契約の際にあらかじめ告知しましょう。
瑕疵担保責任を負う期間は2ヶ月~3ヶ月程度が一般的
民法上、売主は
- 買主が瑕疵(かし)を見つけてから1年間
- 買主が瑕疵(かし)の存在に気づかなかった場合には、物件の引き渡しから10年間
の瑕疵担保責任を負います。
ただし、民法の瑕疵担保責任の規定は任意規定であり、売買契約の際に瑕疵担保責任を負う期間を短縮、もしくは免責にするという特例を設けることができます。
一般的な中古住宅の売買契約においては、
- 瑕疵担保責任を負う期間は、2ヶ月~3ヶ月程度に定める
- 瑕疵担保責任免責という特約条項を契約書に記載する
というのが一般的です。
要注意!現状有姿=瑕疵担保責任の免責ではない
不動産売買契約の際、売買契約書に「現状有姿」「現状有姿にて引き渡す」という文言を入れるケースがあります。
現状有姿とは「現在のあるがままの状態」という意味で、現状有姿にて引き渡すとは「契約から引き渡しまでの間に、不動産の状態に変化があっても売主は責任を負わないこと」を意味します。
この「現状有姿にて引き渡す」という文言、厳密には、瑕疵担保責任を免責するという意味ではありません。
もしも瑕疵担保責任を免責する特約事項を入れる場合は、「瑕疵担保責任を負わない」という具体的な文言を入れなければなりません。
ただし、瑕疵担保責任を免責する特約を結んだ場合でも、売主が瑕疵を認識していながら故意に告知しなかった場合は、責任を追求されます。
また、売主が不動産業者である場合は、買主に不利となる瑕疵担保責任を免責する特約は無効となります。
瑕疵が見つかれば補修の費用負担や契約解除・損害賠償の可能性も
不動産物件を売却後、何らかの瑕疵(かし)が見つかった場合、どんなことが起こり得るのでしょうか。
民法の第566条において、売主の責任は以下のように定められています。
「売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」
出典:e-Govウェブサイト(総務省運営)の「法令検索」より
ちょっと難しいですね。もう少し分かりやすく具体例を含めて説明すると、次のようなことを言っています。
雨漏りや水漏れ、排水管の故障などの瑕疵(かし)があると、購入した不動産で“居住する”という目的を達成することができません。
この場合、買主は修理費用や補修工事にかかる費用を損害賠償として売主に請求することができます。
修理や補修ができないような重大な瑕疵が見つかった場合は、契約解除となる可能性があります。
このように瑕疵担保責任は、物件を売却する上で大いに注意すべき点といえます。
次項からは、瑕疵担保責任に問われないための具体的な対策についてチェックしていきましょう。
瑕疵担保責任に問われないための対策
上述のとおり、売買契約を結ぶ際に瑕疵担保責任の免責の特約があれば、瑕疵担保責任を免責されます。
ただし「瑕疵担保責任の免責」は、買主にとって不利な条項です。免責によって、購入希望者の減少や大幅な値引きの原因となる可能性があります。
特に築浅の物件の場合は、2〜3ヶ月の瑕疵担保責任を負う期間を設定することが多いと思われます。
瑕疵担保責任に問われないために、売却前の準備が必要です。
主な対策として、下記の3つの対策があります。
瑕疵担保責任に問われないための3つの対策
- 物件の不具合は絶対に隠さない
- 契約時に買主と正確な意思疎通を行う
- 売却前にホームインスペクション(住宅診断)を行う
ひとつひとつ確認していきましょう。
物件の不具合は絶対に隠さない
物件についての欠陥、不具合に関しては絶対に隠さないようにしましょう。
不動産取引において、自分が知っている物件の瑕疵を意図的に隠した場合、あとになって瑕疵が見つかると、告知義務違反として多額の損害賠償に問われる可能性があります。
気をつけたいのが、自分では瑕疵と思っていないものも瑕疵になるケースです。
「自分は欠陥や不具合とは思わない」という思い込みは捨てることが大切です。
これは特にはじめて不動産の売却をする場合は、特に気をつけたいポイントです。
売主の目線ではなく、自分はこれからこの物件を買う人間であるという目線で物件を見直してみましょう。
また、自分だけで瑕疵をチェックするのには限界があります。
売買の専門家である不動産会社とも相談して、売却前に売却物件の瑕疵を洗い出ましょう。
契約時に買主と正確な意思疎通を行う
契約時に買主と正確な意思疎通を行うことは、瑕疵担保責任の対策として極めて重要です。
先に環境的瑕疵においても説明したとおり、自分では産業廃棄物処理場や火葬場といった嫌悪施設を問題にしなくても、買主の目には大きな問題として映る可能性があります。
例えば、売却する不動産に雨漏りを修繕した履歴があり、現在は雨漏りをしていない場合でも、説明事項に盛り込むべきです。売却後に雨漏りが発見された場合、瑕疵担保責任を問われる可能性があります。
どんなに細かい箇所でも買主にきちんと説明することで、買主との信頼関係を築くことができます。
瑕疵担保責任の問題に限らず、万が一何らかのトラブルが発生した場合でも、買主との信頼関係が築けていれば円満な解決に至る可能性が高くなります。
売却前にホームインスペクション(住宅診断)を行う
ホームインスペクション(住宅診断)とは、中古のマンションや一戸建ての物件の状態を第三者の立場から診断することです。主にホームインスペクター(住宅診断士)と呼ばれる専門家によって行われます。
ホームインスペクションを行うメリットは、物件の劣化状況や欠陥・不具合があるかどうか、住宅の設備状況、改修が必要となる箇所とその時期などが明らかになります。
不動産を売却する前に、ホームインスペクションを行っておくことで、「ホームインスペクション済みの物件」として買主に安心感をアピールすることができます。
ホームインスペクターの費用相場は5~6万円程度です。耐震診断などの機器を用いた詳細な診断の場合には、10万円以上かかる場合もあります。
ホームインスペクションの診断内容は、会社によって異なりますが、主な診断箇所は「住宅周り」「屋根や外壁」「床下」などです。ホームインスペクターによる目視によって診断されます。
特に床下や屋根裏の見えない箇所についての診断は、瑕疵担保責任の対策として有効です。
信頼できるホームインスペクターを選ぶポイント
またホームインスペクターは、国家資格ではなく民間の資格です。
信頼できるホームインスペクターを選ぶポイントは、以下を参考にしてください。
以下すべての条件が必須というわけではありませんが、目安になれば幸いです。
ホームインスペクター(住宅診断士)を選ぶポイント
- 実績がある会社であること
- 建築士資格を持ったホームインスペクターを選ぶこと
- 適正価格であること(相場より不自然に安い会社は避けましょう)
なお、ホームインスペクションによって修繕が必要な欠陥や設備が見つかった場合、
- 修繕をおこなう
- そのままの状態で買主に確認してもらい、その分の値引きを行う
といった判断に迫られます。
この場合は、まず修理業者に修繕に必要な見積もりをしてもらいましょう。
その上で、買主値引き額と比較して、修繕費用を抑えられる方を選びましょう。
まとめ
それでは、不動産売却における瑕疵担保責任についておさらいしましょう。
記事のおさらい
- 瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは、不動産の隠れた瑕疵(かし)に対する責任
- 瑕疵とは、不動産の欠陥や不具合のこと
- 不動産の瑕疵には物理的・法律的・心理的・環境的の4種類の瑕疵がある
- 特約で瑕疵担保責任を負う期間の短縮や免責ができる
- 故意に隠した瑕疵は免責されない
- 瑕疵によって賠償請求や契約解除される可能性もある
- 瑕疵担保責任の対策としてホームインスペクションが有効
不動産の売却において、瑕疵担保責任は避けては通れない問題です。
瑕疵担保責任で問題となる瑕疵は、売主も認識していない隠れた瑕疵です。免責事項以外に瑕疵担保責任を問われる可能性をゼロにはできません。
しかし今回の記事で紹介したように、売却前の詳細なチェックやホームインスペクションなどの対策を用意しておけば、瑕疵担保責任を問われるリスクは下げられます。
今回の内容が、不動産売却の契約上のリスクを減らす参考になれば幸いです。
不動産ライター兼不動産経営者
宅地建物取引士、保育士
1983年福岡生まれ。上海復旦大学卒。 商社、保育園、福祉施設での勤務を経て、現在は不動産の記事を中心に手がけるライター兼不動産経営者。実際に店舗・住宅を提供している立場から、不動産に関する記事を執筆中。 趣味はフットサル、旅行、読書。美容と健康のために毎日リンゴ人参ジュース飲んでます。