重要なお知らせ

病死の場合はどうする?マンション売却で告知義務が必要になるケースを紹介

2019.05.23投稿 室内で病死した場合のマンション売却
監修の中村昌弘さんの写真

コンサルタント

監修 中村昌弘

\!初めてをサポート!/
マンション売却のすべてを公開中

あまり多い事例ではありませんが、病死をしたマンションを売却する場合もあります。

一般的に、殺人や自殺があった物件は「買主に伝える必要がある」というのは何となく理解している人もいると思いますが、病死の場合はどのように対応するか分からない方も多いでしょう。

しかし、病死をしたマンションを売却する場合も、殺人や自殺をしたマンションと同じような扱いになることもあるので注意が必要です。

そのため、この記事では以下のような点を解説していきます。

  • 病死したマンションを売却する場合の注意点
  • 実際に病死したマンションを売却した際の訴訟事例
  • 病死したマンションを売却する際の価格は下がるのか?
  • 病死したマンションはリフォームなどをして売却したほうが良いか?

筆者は、元々マンションディベロッパーの営業マンであり、今まで数多くの不動産を仲介してきました。

病死したマンション売却の経験はありませんが、やはり業界に身を置いていたのでプロの視点から解説することは可能です。

今回はそんな知見を活かして執筆しているので、ぜひ参考にしてみてください。

病死していてもマンション売却できるが注意が必要

冒頭でもお話ししたように、一般的に買主に「伝える必要がある(告知義務)」があるのは、その物件で自殺や殺人が起こった……。いわゆる「事故物件」の売却時と認識している人は多いでしょう。

しかし、実は病死していても告知義務が必要な場合があるので、マンション売却時は十分に注意しなければいけません。

部屋の状態によってはマンションが事故物件扱いになることがある

事例は後述しますが、たとえば以下のようなケースは事故物件と同じく、告知義務が生じる可能性があります。

  • 遺体が放置されて腐乱死体として発見された
  • フローリングなどに遺体の形跡があり手を加えられていない
  • 周辺住民がネガティブな印象を持っている

こちらも後述しますが、告知義務があるどうかは物件取得者が「心理的瑕疵(嫌な思い)」を負うかどうかで判断されます。

そのため、上記のようなケースは物件取得者が心理的瑕疵を負うと判断され、事故物件として扱われる可能性が高いです。

病死の原因を明らかにしておいたほうが良い

仮に病死したマンションを売却する場合は、病死した原因を明らかにしておいたほうが良いでしょう。

というのも、稀なケースではありますが、マンション素材として使用されているものが病死の原因となっていることがあるからです。

たとえば、化学物質やアスベストといったものが原因で発症した呼吸器系の病気、マンションの周辺に建っている化学工場からの汚染物質といったものが原因の病気などがそれに該当します。

仮に、マンション素材が原因で病死した旨を伝えずにマンションを売却して、購入者が同じ病気になってしまったとしましょう。その場合、告知義務違反として損害賠償請求をされてしまうリスクがあるのです。

トラブル回避のために売主は「告知義務」を知っておくこと

前項でも少し触れましたが、売主はトラブル回避のために「告知義務」を知っておきましょう。

告知義務を知っておくことで、マンション売却時に告知するべきかどうかの判断できるようになります。それは買主とのトラブルリスクを避ける上では重要なことです。

告知義務とは心理的瑕疵のこと

上述したように、告知義務があるかどうかは買主が心理的瑕疵を負うかどうかによります。

心理的瑕疵とは、買主がその物件に居住するときに、心理的に嫌な思いをするかどうかということです。

そのため、殺人や自殺という事件があった物件は誰もが嫌がるので、心理的瑕疵があるということは分かりやすいです。

だからこそ、「心理的瑕疵があり告知義務がある物件=殺人・自殺があった物件」として認知されているともいえます。

心理的瑕疵の事例

結論からいうと、心理的瑕疵があるかどうかに明確な定義はなく、事件や事故の内容・状況や発生時期によって告知義務があるかどうかは変わります。

たとえば、心理的瑕疵がある可能性の高い事例は以下です。

  • 物件内で殺人事件が起こった
  • 物件内で自殺が起きた
  • 物件の目の前の道路で交通事故があり敷地内で事故者が死亡した

ただし、上記の事例すべてに心理的瑕疵があり、告知義務が発生する物件というわけではありません。

仮に、物件内で自殺が起きたものの、それが30年前の話であり、自殺があってから入居者が1回変わっているとします。

その場合は、30年という月日が経っている点と、自殺者以外に別の入居者が住んだという点で、心理的瑕疵は和らいでいると判断され告知義務は発生しないかもしれません。

一方、マンションの敷地内で殺人事件があったものの、その事件が40年前の事件だったとします。

これは、40年という月日と、マンションの室内でなく敷地内という点で、告知義務なしと判断される可能性はあります。

しかし、その事件の内容が猟奇的で周辺住民の記憶に残るほどであれば、たとえ40年前でも心理的瑕疵ありと判断され告知義務が発生する可能性もあります。

このように、心理的瑕疵があるかどうか、告知義務があるかどうかはケースバイケースであり、それは病死をしたマンション売却でも同じことがいえます。

実際に病死が告知義務に当たったケース

ここまでで、心理瑕疵がある物件かどうか、告知義務があるかどうかに関しては曖昧であることが分かったと思います。

心理的瑕疵を感じるかどうかは人それぞれ違うので、一概に「心理的瑕疵があるのは○○という物件」と定義づけるのは難しいです。

そこで、この章では殺人や自殺ではなく、「病死」が告知義務違反に該当したケースを紹介します。

この事例を参考にすれば、仮に自分の物件で病死があった場合に心理的瑕疵があるかどうかの大まかな判断材料になるでしょう。

事例の詳細

今回紹介するのは平成22年の事例で、競売で物件を取得した人が、物件の引渡し後に物件内で過去に腐乱死体が発見されたことを知ります。

そして、その件を受けて物件取得者は「腐乱死体が発見された過去は心理的瑕疵に該当する」として、本物件の売却許可決定の取り消し(≒売買契約の取り消し)を求めたというのが本事例の概要になります。

この事例では、元々の物件所有者が物件内で死亡しており、その遺体は4か月もの期間に渡り本物件に残置されていました。

その影響で、遺体は腐乱して室内には強烈な異臭が立ち込めており、最終的には警察官立ち合いの元で周辺住民などに事情聴取をするという事態にいたります。

そして、この物件の購入者はこの事実を認識しておらず、物件明細書や評価書にはその旨の記載はありませんでした。

さらに、遺体発見後に「リフォーム」などを含め、室内に手を加えられた形跡はありませんでした。

競売は内覧ができないという特殊な物件取得になるので、物件取得者は室内を確認することができなかったため、腐乱死体が発見された事実を物件取得者が気づくのは困難です。

※事例の出典元:RETIO(一般社団法人 不動産適正取引推進機構)

告知義務ありで売買契約はキャンセルになった理由

この事例は民事執行法75条1項の「損傷」に当たるかどうかが争点でしたが、これは「告知義務違反に当たるかどうか?」と置き替えることができるでしょう。

結果的に、「腐乱死体が発見された過去がある」という重大な事実を物件取得者が知らなかったことで、売却許可決定の取り消しとなりました。取り消しとなった主な理由は以下の通りです。

  • 不動産の交換(売却)価値が大きく損なわれる可能性がある
  • 物件明細書などにその点は反映されていない
  • 今回の事例によって床の変色や異臭が残っている
  • それにも関わらず特に手を加えられた形跡がない
  • 腐乱死体となって発見された事実は周辺住民に広く知れ渡っている

上記の理由によっては、この物件を取得者が使用するのも難しいですし、転売するのも厳しい状況であると判断されました。

病死でも同じことがいえる

今回のケースは腐乱死体とはいえ殺人などの凶悪犯罪ではありません。

しかし、それでも「物件明細書などにその点は反映されていない」という告知義務違反も売却許可決定の取り消しの一因となっています。

逆にいうと、その事実を知っている上での物件取得であれば、売却許可決定の取り消しにはならなかった可能性は十分にあるでしょう。

仮に、これが病死で孤独死をしてしまい、その遺体がしばらく放置されていたら同じことが起こるでしょう。そのようなときは、殺人や自殺でなく「病死」とはいえ、告知義務があるということです。

告知義務ありかどうかの判断方法

このように、殺人や自殺以外の病死でも告知義務が発生する可能性もありますが、定義が曖昧なため実際に告知義務があるかどうかは判断が難しいです。

そんなときは以下の点を意識してマンション売却を行いましょう。

  • 不動産会社に相談する
  • なるべく実績のある不動産会社に依頼
  • 査定時にヒアリングする

不動産会社に相談する

まずは不動産会社に相談することです。殺人や自殺であれば不動産会社が調べれば分かるかもしれませんが、病死をしているかどうかは分かりません。

そのため、売主の方から不動産会社に相談しないと、不動産会社は病死の事実を認識できないので、必ず相談しましょう。

自己判断で告知義務を判断するのはリスクがあり、万が一買主とトラブルになれば上述した事例のように売買契約の取り消しもあり得ます。

なるべく実績のある不動産会社に依頼

ただし、不動産会社といっても実績のある不動産会社が望ましいです。

というのも、繰り返しますが心理的瑕疵に該当するかはケースバイケースであり、その判断は非常に難しいからです。

そのため、仲介業の経験が浅い不動産会社や営業マンの場合、判断を誤る可能性もあります。

そのようなことにならないよう、過去に仲介実績が豊富な不動産会社や営業マンに相談するようにしましょう。

仮に、実績のある不動産会社でも営業マンが経験不足で心配であれば、上席に相談するなどの対応をおすすめします。

査定時にヒアリングする

また、不動産会社を決める唯一の判断材料である「査定時」にヒアリングすることも重要です。

査定は、物件を見ないで査定額を提示する机上査定と、物件を見てから査定する訪問査定がありますが、訪問査定時に営業マンにヒアリングすると良いでしょう。

仮に、病死したマンションを売却するのであれば、病死の時期や死因など知っている限りを営業マンに伝え、告知義務に該当するかの判断をするということです。

その際、過去に同じようなマンション売却の実績があれば理想であり、その点も不動産会社選びの判断基準の一つとして認識しておきましょう。

前の住人が病死している場合も考え方は同じ

病死をした過去があるマンション売却で多い質問は、「前の住人が病死している場合はどうなるか?」という点です。

結論からいうと、前の住人が病死している場合でも考え方は同じで、買主が心理的瑕疵を感じる可能性があるのであれば告知したほうが良いです。

たとえば、上述した事例のように病死による腐乱死体で発見されたマンションを購入し、それを売却するとします。

このとき、仮に自分が住んで30年住んでいれば心理的瑕疵に該当しないと判断されるかもしれませんが、1年前の出来事であれば「告知義務あり」と判断する不動産会社は多いでしょう。

少なくとも、前の住人のことだから関係ないとは思わずに、きちんと不動産会社に相談することをおすすめします。

人が病死したマンションは売却価格を下げたほうが良いか

また、「人が病死したマンションは売却価格を下げたほうが良いか」という疑問を持つ人もいると思いますが、結論からいうとこれもケースバイケースです。

たとえば、上述した腐乱死体が発見されたケースは、さすがに買主の心理的瑕疵が大きいので相場価格で売るのは難しいでしょう。

しかし、自宅療養をしていて家族に看取られて病死したのであれば、それは自然死に近いといえます。

もちろん、それでも買主によってはネガティブな印象を受ける人もいると思いますが、相場価格通りに売却できる可能性はあるでしょう。

つまり、病死したマンション=価格を下げなければいけないというわけではなく、その点も不動産会社と相談して判断したほうが良いです。

人が病死したマンションを売却するために実施すると良いこと

最後に、病死したマンションを売却するために実施すると良いことを解説します。

結論からいうと、クリーニングやリフォームなどをしたほうが売却しやすいですが、これもケースバイケースといえます。

たとえば、上述した「腐乱死体で発見された」という事例のような状況であれば、クリーニングや変色したフローリングの張り替えなどは必須です。

一方、前項のように「自宅療養による病死」などの場合には、床が変色していたり、室内に異臭が立ち込めたりするわけではないので、クリーニングやリフォームは不要でしょう。

まとめ

それでは、今回解説した「病死したマンションを売却する場合」について、覚えておくべきことをおさらいします。

記事のおさらい

  • 殺人や自殺と同じく病死でも告知義務が発生する場合もある
  • 告知義務があるかどうかは曖昧なので不動産会社に相談する
  • 前の住民の病死でも告知義務が発生する可能性はある

病死をしたマンションを売却する上で重要なことは、不動産会社に相談することです。

もちろん、その不動産会社が優良であることが条件ではありますが、少なくとも売主だけで判断するのは避けましょう。

最悪の場合、売買契約の取り消しだけでなく損害賠償請求が発生するリスクもあるので、病死をしたマンション売却は慎重に進めないといけません。

監修の中村昌弘さんの写真

コンサルタント

監修 中村昌弘

宅地建物取引士

新卒で不動産ディベロッパーに勤務し、用地仕入れ・営業・仲介など、不動産事業全般を経験。入居用不動産にも投資用不動産にも知見は明るい。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。趣味は読書。好きな作家は村上春樹、石原慎太郎。

関連記事

築年数が古いマンションを高く売却する4つのポイント

築年数が古いマンションを高く売却する4つのポイント

どこまでが告知義務?マンション売却で訴えられないための全知識

どこまでが告知義務?マンション売却で訴えられないための全知識

不動産売却でよく起こるトラブル事例と回避策・解決策

不動産売却でよく起こるトラブル事例と回避策・解決策

  • このエントリーをはてなブックマークに追加