マンション売却時の「退去日」は重要!リスクを軽減する決め方とアドバイス
2019.12.25投稿編集 すまいうる編集部
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マンションの売却が終われば買主にマンションを引渡すので、売主は退去しなければいけません。
ただ、その「退去日」に関して意外と知られていない注意点があります。退去日の設定を間違えたり、注意点を知らなかったりすると、売主が大きな不利益を受けることもあるので注意が必要です。
そこで今回の記事では、マンション売却の退去日について以下を解説します。
この記事ではこんな悩みを解決します!
- マンションはいつ退去すれば良い?
- マンションからの退去日を決める時に注意すべきことはある?
- 退去するときにやっておいた方が良いことはある?
本記事は、元マンションディベロッパーの営業マンとして数々のマンション仲介をおこない、また自身のマンションの売却を経験された人の実体験をもとに構成しております。
マンション売却を検討している人も売却中の人もぜひ参考にしてみてください。
マンション売却における退去のタイミング
マンション売却において、売主はいつ退去すべきか。結論としては、売主の意志でいつ退去しても大丈夫です。
ただし、マンションの「引き渡し日」までに退去する必要があります。引き渡し後のマンションはあなたのものではなくなるので、住み続けることはできません。引き渡し日=退去日と考えてはいけないのです。
退去日と引き渡し日を混同してしまうケースがあるので、一旦ここで整理しましょう。
- 引き渡し日:マンションを買主に引き渡し、所有権が買主に移る日
- 退去日 :マンションから売主が退去する日
マンションの引き渡し日に法務局で所有権移転登記手続きをするため、引き渡し日までに売主はマンションから退去している必要があります。
まとめると、『引き渡し日までであれば売主の意思でいつ退去してもOK』ということになります。
では、具体的なケースで考えてみましょう。
新居に引っ越したいタイミングがある場合
新居に引っ越したい日が決まっているのであれば、その日を「退去日」として固定します。
引き渡し日:4月10日
売主の希望:転勤の関係で3月30日に引っ越したい
→【退去日】3月30日
この場合ももちろん、引っ越したい日がマンション引き渡し日よりも前であることが前提です。
ギリギリまで今のマンションに住みたい場合
できるだけ長く現在のマンションに住んでいたい場合は、引き渡しの前日を退去日とし、引越しのスケジュールを組みます。
引き渡し日:4月10日
売主の希望:できるだけ長く、ギリギリまで今のマンションに居たい
→【退去日】4月9日(引き渡し日の前日)
注意したいのは、“確実に”退去日を引き渡し日の前日で固定する、という点です。
ギリギリまで住みたいあまりにうっかり「引き渡し当日」に引っ越し業者の予約をとってしまったり、片付けが終わらず引き渡し当日に退去するということがないようにしましょう。
万が一、約束の引き渡し日までに退去できない事態になってしまうと、引き渡しが完了しません。そうなると、売主の違約で損害賠償請求をされる可能性があります。
そのため、できれば余裕をもって引き渡し日の2日前を退去日(引越し日)として動いた方が良いです。
最短で退去したい場合
最短で退去したい場合は、とにかく引越し業者に早く連絡しましょう。
引き渡し日:4月10日
売主の希望:できるだけ早く退去し、新居へ移りたい
→【退去日】引越し業者の最短空き枠
再度のお伝えになりますが、退去自体はいつでも可能です。いつ退去するかは売主の自由です。
引っ越し業者の予約が取れるなら、引き渡し日よりかなり前に退去しても何ら問題ありません。
退去日を決めるときの3つの注意点
前章でお伝えしたように、マンションは引き渡し日までなら売主の意志でいつでも退去しても大丈夫です。
しかし、売買契約の内容や売却理由によっては、退去日の設定において「引き渡し日までに」ということ以外に注意すべきポイントがあります。
具体的には以下3つのポイントです。
- ローン特約がある場合は、ローン本承認が下りたあとに退去日を決める
- 買い替え特約がある場合は、買い替え成立後に退去日を決める
- 自分も買い替えの場合は新居の引渡し日に注意
これらを知っておかないと、売主であるあなたが不利益を被る可能性が高くなります。
スムーズにマンションを売却するためにも、ぜひ目を通してください。
売買契約にローン特約が含まれる場合(よくあるケース)
繰り返しになりますが、引き渡し日までであれば売主の意志でいつでも退去して良いです。
ただ、マンションの退去日を決めるタイミングは、買主のローンの本承認が下りたあとが理想的です。理由は、売主の意志に関係なく売買契約書に「ローン特約」というものが盛り込まれているケースがほとんどであるためです。
なぜローン本承認が下りたあとの退去が良いのか
ローン特約とは、「ローンの本承認が否決になれば売買契約は白紙解約になる」という特約です。つまり、契約がなかったことになる、ということです。
住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、下記のような流れでローン審査や売買契約などがおこなわれます。
- ローンの仮審査
- ローンの仮承認
- 売買契約の締結
- ローンの本審査
- ローンの本承認
- 物件の引渡し
上記からわかるように、ローンの本審査の前に売買契約を締結します。
本審査に落ちてしまった場合、買主(ローン借入者)には支払い能力がありません。その状況で売買契約が有効だと、買主はもちろん売主にとってもデメリットは大きいです。
このような事態を回避するため、ローン特約が売買契約に盛り込まれるわけです。
仮承認を受けていれば本審査で否決になるケースはほぼないですが、万が一否決になれば、ローン特約が適用されて売買契約は白紙解約になります。ローン本承認の結果が出る前に退去をしてしまうと、最悪の場合「マンションから退去したのに売買契約が白紙になってしまった」という状況になりえるのです。
退去日にこだわりがなければ、買主のローン本承認後に退去日を決めることをおすすめします。本承認の前に退去しても契約上の問題はありませんが、売主のリスクが増すということは覚えておきましょう。
うーん…ローンの本審査で承認されなかったとして、売主には何の落ち度もないよね?それなのに契約がなかったことになるなんて、あんまりだよ。
ひなペンギン
ペンギン先生
そうだね。だから、買主側の問題でローンの本承認が下りなかった場合は、白紙解約にならないよ。たとえば、仮承認後に買主が仕事を辞めて収入がゼロになったりね。
売買契約に買い替え特約が含まれる場合(稀なケース)
売買契約に「買い替え特約」が含まれる場合は、必ず買い替え成立後に退去日を決めましょう。
というのも、ローン特約で白紙解約になるケースは極めて稀ですが、買い替え特約が適用され白紙契約になるケースは少なくないからです。
なぜ買い換えが成立したあとに退去すべきなのか
買い替え特約とは、買主が買い替えで物件を購入するときに利用されます。
買い替え特約の内容は、「○月×日までにA(買主)の所有するマンションが▲▲万円以上で売れなければ、本物件(今回売却する物件)の売買契約は白紙解約になる」という内容です。
売主からすると、A側(買主)の買い替え不成立によって、○月×日に売買契約が白紙解約になるリスクがあります。
そのため、買い替えが成立し、買い替え特約が無効になった後に退去日を決めることをオススメします。
うわぁ…こんな特約、売主にすごく不利じゃない…?
ひなペンギン
ペンギン先生
たしかに、売主からすればリスクしかないね。ただ、個人が中古マンションを売るときは、買い替え特約が結ばれるケースは少ないよ。
買い替え特約は、おもに新築物件を販売するとき(売主は不動産会社)に利用されるものです。個人が中古マンションを売るときは、買い替え特約が契約に盛り込まれるケースは少ないです。
ただ、まったくないわけではないので、買い替え特約を結んでいるかどうかを確認した上で退去日を考えましょう。
自分も買い替えの場合:新居の引き渡し日に注意
また、売主自身も新居を購入する「買い替え」の場合には、新居の引き渡し日も考えて退去日を考えましょう。
新居の所有権が買主(あなた)に移るのは、新居の引き渡し日です。つまり、新居に引っ越すことができるのは、新居の引き渡し日以降ということです。その絶対条件のもとでは、退去日をいつにするかによっては「仮住まい」を探す必要が出てきます。
できれば、新居の引き渡し日よりもあとに退去日を設定できるとスムーズです。
「退去日」が「新居の引き渡し日」よりも後の場合
このケースでは、新居の所有権があなたに移った状況で、いまのマンションから退去し新居へ引っ越すことができます。いちばんスムーズなスケジュールと言えます。
「退去日」が「新居の引き渡し日」よりも前の場合
このケースでは、いまのマンションから退去しても、新居に移り住むことはできません。新居の引き渡しがおこなわれるまで、一時的に住む場所(仮住まい)を探す必要があります。
「退去日」と「新居の引き渡し日」が同じ場合
大抵は引き渡し当日は午前中に手続きをしますので、午後には引っ越して住めることが多いです。
しかし、引き渡しの手続きに時間がかかる可能性があります。万が一の場合には、一時的に住む場所(仮住まい)を探す必要があります。そのため、新居の引き渡し日の翌日から引越しできると考えた方が賢明です。
マンションから退去するためにやっておくべき3つのアドバイス
前章までは、退去日を決めるときに知っておくべきことをお伝えしました。最後に、マンションから退去するにあたって、売主がおこなう下記3点についてお話します。
- 引越し業者への早めの見積もり依頼
- 粗大ごみの処分
- かんたんな部屋のクリーニング
それぞれ実施する際のワンポイントアドバイスも書いています。
引越し業者へ早めに見積もりを依頼する
上述したように、引越し業者は混雑するので早めに連絡しましょう。特に3月・9月の移動シーズンは引越し業界の繁忙期なので、直前だと予約が困難になります。
また、1社ではなく複数社に見積もり依頼することも重要です。
というのも、引越し業者によって金額は大きく異なるので、複数社に見積もりを取り比較することが重要だからです。
見積もり一括サイトなどを利用して、複数社に見積もり依頼をした後に業者選定することをおすすめします。
粗大ごみの処分を事前におこなう
長年住んでいたマンションから退去するにあたって大変なのは、粗大ごみの存在です。退去時点ですべてを片付けておく必要はありませんが、遅くても買主へ引き渡す前までに片付けておく必要があります。
粗大ごみの処分方法は以下3つの方法があります。
- 行政に連絡して引き取りに来てもらう
- 廃品回収業者に依頼する
- 転売する
いずれも自分ひとりで完結するものではありませんので、早めに処分にむけて動くことをおすすめします。
行政に連絡して引き取りに来てもらう
もっとも安価でかんたんな方法は、行政に連絡して引き取りに来てもらう方法です。具体的には以下の流れになります。
- 電話やネットで手続き
- 粗大ごみ用の券をコンビニなどで購入
- その券を貼り付けて回収当日に集合玄関前などに出す
粗大ごみの回収は毎日やっているわけではなく、1日で回収できる量にも限度があります。そのため、自分の都合の良い日に回収してもらえない可能性もあります。特に、引っ越しシーズンになると混雑するので、2週間以上先の回収になることも珍しくありません。
場合によっては、引き渡し日以降の回収になってしまいかねません。できるだけ早めに手続きしておきましょう。
廃品回収業者に依頼する
行政に回収を依頼する以外に、廃品回収業者に依頼するという方法があります。
ただし、多くの場合は1万円~数万円の回収費用がかかってきます。(型の新しいエアコンや高級家具などは無料、もしくは買い取ってもらえるケースもあります)
廃品回収業者は、部屋まで粗大ごみを取りに来てくれるメリットがありますが、費用は決して安くはありません。費用を気にする人は、行政による回収を先に検討してください。
廃品回収業者に依頼する場合、混雑していると自分の希望日に回収してもらえない可能性があります。依頼する場合は早めに連絡しましょう。
転売する
そのほか、メルカリやジモティなどを利用して転売するという方法もあります。
「家具・家電」専用の宅配便もあるので、その配送費以上で売ることができれば利益を得られる上に、上述した粗大ごみの手続きも不要です。
しかし、転売できるかどうかは分からないので、遅くとも退去日の2週間前までに売れなければ諦めて行政か廃品回収業者に依頼しましょう。
そうしないと、結局退去日まで売れないまま、新居に粗大ごみを持っていくことになってしまいます。
退去後にかんたんなクリーニングをしておく
さいごに、退去後はかんたんににクリーニングしておくことをおすすめします。
もちろん、クリーニングは義務ではありませんが、せっかく購入した部屋が埃だらけであれば買主も嫌がるでしょう。そのような心理で引渡しを受けると、買主は些細な傷や汚れも気になるかもしれません。
それは、引渡し後のクレームリスクにもつながるので、かんたんでも良いので掃除しておくことをおすすめします。
マンションから退去したあとの流れ
マンションから退去したあとは、買主へ引き渡しをおこなうだけです。
と言っても、ただ鍵を渡すだけではありません。所有権を売主から買主へ移す手続きが必要です。
引き渡しに必要な各種手続きは、同一日にまとめておこなうのが普通です。
- 買主に住宅ローンの融資が実行される
- 買主から売主へ、マンション購入代金の残りを支払う(売主の口座へ入金)
- 売主がローンの残債を完済する
- 抵当権を抹消し、所有権移転の登記をおこなう
- マンションの鍵と必要書類を買主へ渡す
これらの流れを経て、ようやくマンション売却が完了します。
引き渡し日までにローン完済のための手続きをしておくこと
上記の流れで「売主がローンの残債を完済する」と書きましたが、ローン完済のためには事前の手続きが必要です。
マンションの引き渡しまでに実際に完済しなさいということではなく、「完済するための準備」です。
引き渡し日が決まったら、すぐに金融機関へ連絡して完済手続きの方法を確認しましょう。金融機関によっては平日に銀行へ出向く必要があるため、早めにスケジューリングすることをおすすめします。
なお、この手続きはローンの完済に関する手続きなので、すでにローンを完済している方は不要です。
まとめ
それでは、今回解説した「マンション売却における退去」について、覚えておくべきことをおさらいしましょう。
記事のおさらい
- 遅くてもマンションの引渡し日の前日までに退去すること
- ローン特約や買い替え特約の有無を確認して、退去日を設定すること
- 引越し予約や粗大ごみの処分申込みは早めにおこなうこと
早めに退去できればそれに越したことはありませんが、特約がある場合は特約が無効になってからの退去が無難です。
いずれにせよ、退去日が決まり次第、引越し業者や金融機関への連絡は早めにおこない、スムーズに退去できるように段取りしておくことが重要です。
編集 すまいうる編集部
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