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不動産売却時の「つなぎ融資」で事前に知るべき注意点と意外なメリット

2018.09.13投稿 つなぎ融資について
監修の竹内英二さんの写真

不動産鑑定士

監修 竹内英二

不動産の売却で買い替えを行うと、売却と購入でうまくタイミングが合わないことがあります。
むしろ、タイミングが合わない方が自然です。

「つなぎ融資」は、タイミングが合わない場合の資金繰りを解消する方法です。

この記事は、普段から様々な資金繰りの相談を受けている不動産鑑定士である筆者が、これまでの経験や知識からつなぎ融資の正しい情報をお伝えしたいと思います。

この記事ではこんな悩みを解決します!

  • つなぎ融資ってそもそも何?
  • つなぎ融資ってどんなときに使うの?
  • つなぎ融資を受けずに済むにはどんな方法があるの?
  • つなぎ融資にもメリットはあるの?

この記事では上記のような疑問をお持ちの人に向けて、不動産売却におけるつなぎ融資について、誰にでもわかるように順を追って説明していきます。

つなぎ融資の使い方はもちろん、つなぎ融資を受けずに済む対策についても、包み隠さず解説します。

この記事を最後まで読めば、不動産売却におけるつなぎ融資について分かるようになり、つなぎ融資を上手に活用できるようになります。

それでは、不動産売却のつなぎ融資について解説していきましょう。

つなぎ融資とは

つなぎ融資とは、一時的な資金不足を解消するために、借りることのできる融資です。

具体的には、

  • 家の買い替えで、購入物件の残代金支払いが売却物件の代金受領より先に来る(入金と出勤のタイミングがズレる)
  • 注文住宅を建てる際に、土地を先行して購入する

といった場面で利用されることが多いです。

先につなぎ融資の特徴をまとめると、以下の3つがポイントとなります。

つなぎ融資の3つの特徴

  • 一括返済となる。(「毎月○円ずつ返す」ではない)
  • 融資期間が短い。(半年~1年程度)
  • 金利が高い。(年2.6~3.6%台程度)

それぞれについて詳しく説明していきます。

特徴1.一括返済である

つなぎ融資の特徴は、その返済方法にあります。

我々に身近な住宅ローンであれば、毎月、ちょっとずつ元金の返済を行います。

この「毎月いくら」のように、当事者間であらかじめ定めた方法による債務の返済を「約定返済」と呼びます。

一方で、つなぎ融資は、返済期日が来たら元金をドンッと一括で返済します。

このような返済方法を「一括返済」と呼んでいます。

(例)

  • 住宅ローン(約定返済):1,000万円を借りた場合、10年間かけて毎年100万円ずつ返済する
  • つなぎ融資(一括返済):1,000万円を借りた場合、1年後に一気に1,000万円の元金を返済する

特徴2.短期融資である

つなぎ融資の借入期間は、半年から1年程度と短いのが特徴です。

一括でまとめて返済するつなぎ融資は「短期融資」と呼ばれ、対して、十数年かけて返済をしていく住宅ローンは「長期融資」と呼ばれます。

特徴3.金利が高い

もちろん、つなぎ融資においても金利は発生します。

一般的に、つなぎ融資の金利は住宅ローンに比べて高いです。金利は2.6~3.6%台程度のものが多く、中には15%のようなものも存在します。(2018年9月現在)

例えば、金利3%で1,000万円のつなぎ融資を借りた場合、1年後に金利を含めて1,030万円を返済することになります。

元金は一括返済ですが、金利分の返済は一括払い・複数払いなど、銀行によって異なります。

ここまでつなぎ融資の概要について説明してきました。

つなぎ融資は、一括返済を前提とした金利が高い短期融資であることがわかりましたね。

つなぎ融資が必要なのは「買い先行」となる買い替え時

この章では不動産売却でつなぎ融資が必要となるケースについて説明していきます。

不動産の売却でつなぎ融資が登場する場面は「買い替え」をするときです。

買い替えの中でも、購入物件の残代金支払いが売却物件の代金受領より先に来る場合(買い先行)に利用します。

下の図を見てください。

買い先行とつなぎ融資のの図解

購入物件の支払いが先に来てしまうと、自分で現金を用意しなければなりません。

自分で資金を用意できない場合に、「つなぎ融資」の出番です。

つなぎ融資で購入物件の支払いをおこない、売却物件の代金を受領できたら返済に充てることになります。

逆に、売却物件の代金受領が購入物件の残代金支払いよりも先(売り先行)であれば、つなぎ融資の利用は必要ありません。

最初から「売り先行」で計画すればよいと思っても計画通りにはいかない

買い替えでは、売却を先に行う「売り先行」と、購入を先に行う「買い先行」の2種類があります。

メリット デメリット
売り先行
  • 先に入金されるため資金の目途が確実となる。
  • 焦らずに売却できる。
  • 住みながら売却するため売りにくい。
  • 購入先が決まらないと仮住まいとなる可能性がある。
買い先行
  • 時間をかけて購入物件を探すことができる。
  • 空き家の状態で売却できるため売りやすい。
  • 購入する住宅との二重ローンが発生する可能性がある。
  • 売却価格と時期が未定なため、資金計画が狂う可能性がある。

お金の負担が少なく楽なのは売り先行であるため、買い替えでは一般的に売り先行を選択する人が多いです。

しかし、売り先行で買い替えようと思っても、実際には

「購入物件で良い物件が先に見つかってしまった」
「売却がなかなか計画通りに進まない」

というように、当初の計画通りには進まないことが良くあります。

売り先行を予定していても、突如、買い先行に切替えざるを得ない状況になりえるのです。

その場合に困るのが「資金繰り」です。

資金繰りとは、あとからお金が入ることは分かっているものの、それより先にお金が必要となった場面でおこなう“お金の工面”のことをいいます。

資金繰りが必要となった場面では、つなぎ融資のような短期融資が特に力を発揮します。

「売り先行のままであれば問題なかった買い替えが、突如、買い先行に切り替わってしまった…。」

そんなときに柔軟に切り替えを可能にしてくれる、使い勝手の良いローンなのです。

つなぎ融資の前提は「売却代金を次の購入物件の資金に充てられる状態」

なお、つなぎ融資は、あくまでも売却物件で得た金額で一括返済できる部分のみで利用することが可能です。

例えば、売却物件で残っている住宅ローンが、売却額とほぼ同額の場合があるとします。

このような場合、売却して住宅ローンを返済してしまえば、次の購入物件であてがうことのできる資金がありません。

元々、売却代金を次の購入物件の資金に充てることのできない状態であれば、そもそもつなぎ融資を利用する余地がないことになります。

下の図は、住宅ローンの返済残高が売却代金とほぼ同じケースでつなぎ融資をした場合を表しています。つなぎ融資の返済に充てる資金が足りなくなることが分かりますね。

住宅ローン残高がある時のつなぎ融資

つなぎ融資を使うには、売却物件の住宅ローン残債がほぼないか、または完済している状態で、売却代金を次の購入物件の資金にあてがうことができる状態であることが前提になります。

売却物件で資金ねん出ができない人は、そもそもつなぎ融資を使った買い先行への切替えはできないということが注意点となります。

ここまで不動産売却でつなぎ融資が必要となるケースについて説明してきました。

つなぎ融資は、購入物件の残代金支払いが売却物件の代金受領より先に来る場合に必要となります。

つなぎ融資のデメリットは「余分な費用」がかかること

この章ではつなぎ融資のデメリットについて説明していきます。

つなぎ融資を利用すると、余分な費用がかかるという点がデメリットになります。

具体的には高い金利と、つなぎ融資を組む際の事務手数料です。

金利については、ネット銀行が安い傾向にありますが、それでも2.6%以上あり、35年住宅ローンと比較すると倍以上の金利があります。(2018年9月現在)

またつなぎ融資を申し込む際、事務手数料としては10万円(消費税別)がかかる銀行が多いです。

例えば、金利3%で1,000万円を借りた場合にかかる費用は

利息:1,000万円×3%=30万円
事務手数料:10万円

つまり合計40万円の余分な費用がかかることになります。

遅延損害金が発生する可能性もある

また、つなぎ融資は融資期間が短く、遅延損害金の発生にも注意しなければなりません。

遅延損害金は、年14.0%程度という非常に高い金利で設定されています。

仮につなぎ融資を6ヶ月の期間で借りた場合、6ヶ月以内に売却が確実にできれば問題ありません。しかし、6ヶ月を過ぎても売却できない場合、一括返済ができなくなります。

一括返済ができないと、それ以降、遅延損害金がすごい勢いで増えていきます。

例えば、1,000万円のつなぎ融資を1ヶ月(30日)遅れた場合、遅延損害金はどれくらい発生するか計算してみます。

遅延損害金 = 返済額 × 14% × (遅延日数 ÷ 365日)
      = 1,000万円 × 14% × (30日 ÷ 365日)
      ≒ 11.5万円

つなぎ融資を借りた以上、期日まで確実に売却する必要があります。

最後、焦って無理やり安く売る可能性もゼロではありません。
融資期間が短いという点も、つなぎ融資の隠れたデメリットになります。

ここまでつなぎ融資のデメリットについて説明してきました。
つなぎ融資を利用すると金利や事務手数料等の余計な費用が発生するということがわかりましたね。

つなぎ融資を受けずに済む2つの対策

つなぎ融資を受けずに済むには、売却を早めることに尽きます。

この章では売却を早め、つなぎ融資を受けずに済む対策について説明していきます。

対策1.売却を早めに開始する

売却を早めるには、売却活動の着手時期を早めることが重要です。

当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実際は売却の着手を後回しにしがちです。

なぜなら、買い替えでは購入でお気に入りの物件を見つけることに真剣になり、「売却なんかいつでもできる」という感覚になってしまうからです。

購入に意識を注力したほうが満足度の高い買い替えができるのは事実ですが、「買い先行」になってしまう可能性があります。

売却と購入では力の配分のさじ加減が難しいのですが、売却は早めに始めておくことが重要です。

ポイント①売却を早めに軌道に乗せること

売り先行を狙った買い替えは、売却はあまり悩まずさっと終わらせるのが賢明です。

売却を早めに軌道に乗せるには、インターネットの一括査定サービスが役に立ちます。

一括査定サービスを使うと、最大6社に無料の査定を依頼することができます。(サービスによって、最大社数が異なります)

そのまま不動産会社に売却の依頼をすれば、次の日から早速に売却活動に入ってくれます。

不動産会社がサーっと動いてくれるので、売却活動も一気に軌道に乗せることが可能です。

ポイント②売却と購入は要する時間が異なるということを意識する

売却には通常、最低でも4ヶ月間は要すると思ってください。販売期間で3ヶ月、売買契約から引渡しまでの間に1ヶ月かかるためです。

一方で、購入は良い物件が見つかってしまえば、即断しなければならないこともあります。購入は、場合によってはほとんど時間がかからないこともあるのです。

売却と購入では要する時間が異なるため、売却はなるべく早く着手するようにしましょう。

対策2.最低売却価格を決めておく

売却を即決するには、最低売却価格を決めておくことも重要です。

一括査定サービスでは、複数の不動産会社からの査定額を横並びにできます。横並びにした際、低い査定額にも注目をします。

最低売却価格を決める方法

いざ売却を始めると、低い査定額を提示する買主はすぐに現れることが多いです。

一方で、高い査定額を提示する買主はなかなか現れません。

ここで、高い査定額にこだわり過ぎてしまうと、売却が遅れる可能性が生じます。

売却を早く終結させるには、「この金額以上の買主が現れたら売る」という最低売却価格を決めておくことが重要です。

最低売却価格を決めておかないと、幻の高い査定額にずるずる引きずられ、売却が長引いてしまうことが多いです。

売却が長引き、つなぎ融資を使えば、結局は余計な費用も発生してしまいます。

売却を早めるには、低い査定額にこそ注目し、そこを最低売却価格として決めておくことが重要です。

なお、不動産には早く売るためのテクニックも存在します。不動産を早く売るためのポイントは以下の5つです。

不動産を早く売るためのポイント

  • 欲張らない
  • 一般媒介で売却する
  • 値段設定を工夫する
  • 不動産会社からマメに状況を聞く
  • 買取も検討する

ここまでつなぎ融資を受けずに済む対策ついて説明してきました。つなぎ融資を回避するには売却を速めることがポイントとなります。

つなぎ融資にもメリットはある

つなぎ融資はデメリットばかりではありません。

この章ではつなぎ融資のメリットについてご紹介します。

気に入った物件を逃さず購入できる

つなぎ融資を使えば、突如、気に入った物件が現れても逃さす購入することができます。

これはつなぎ融資の大きなメリットと言えます。

購入では、気に入った物件がいつどこで現れるか分からないという難しさがあります。良いなと思った物件でも、他の誰かが購入してしまえばそれでおしまいです。

次の良い物件がいつどこで現れるか分からないとすると、良い物件に出会えたら購入してしまった方が賢明です。

買い替えは、特に購入のコントロールが難しく、計画通りに進みません。

購入の難しさの解決手段の一つが、つなぎ融資の存在になります。

売りやすくなる

つなぎ融資を利用すると、物件が売りやすくなるというメリットがあります。

その理由として、売り先行と買い先行の特徴が挙げられます。

  • 売り先行:住みながら家を売るため、売りにくい(デメリット)
  • 買い先行:空き家状態で売るため、売りやすい(メリット)

つなぎ融資を利用する多くの人は、もともと売り先行を計画していたけれども、急遽、買い先行に切り替えなければいけなくなった人たちです。あなたもそうかもしれませんね。

予定外の買い先行でも、つなぎ融資を利用することで、新居の購入・引っ越しができるようになります。

つまり、もとの住まいは、売りやすい「空き家状態」となります。

空き家であれば、荷物や家具が一切なく、生活感や雑然感を与えずに済むため、家の印象が上がり、売りやすくなります。

もう少し粘れば高く売れそうな場合には、利用する価値があります。

つなぎ融資の副次的な効果として、物件が売りやすくなるというメリットも知っておきましょう。

つなぎ融資には余計な費用が発生するというデメリットがありますが、気に入った物件を購入でき、売却もしやすくなることから、検討の価値は十分にあるのです。

まとめ

不動産売却におけるつなぎ融資について、ポイントをおさらいしましょう。

記事のおさらい

  • つなぎ融資とは、一括返済を前提とした短期融資のこと。
  • つなぎ融資を利用すると、金利や事務手数料が発生するというデメリットがある。
  • つなぎ融資を回避するには、売却を速めることが重要。
  • つなぎ融資を利用すると気に入った物件を購入でき、売却もしやすくなるというメリットがある。

かんたんに言うと、つなぎ融資は一時的な資金不足を解消するためのローンです。

「先に良い物件が見つかった」
「もう少し粘れば高く売れる」

などであれば、利用する価値が十分にあります。

つなぎ融資は、時間的なズレを解消してくれる緊急避難的な手段です。

上手く活用しながら買い替えを成功させましょう。

監修の竹内英二さんの写真

不動産鑑定士

監修 竹内英二

不動産鑑定士 中小企業診断士 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 賃貸不動産経営管理士 相続対策専門士 不動産キャリアパーソン

大阪大学大学院卒。 不動産鑑定士合格後は、日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定やオフィスビル・賃貸マンション等の開発業務に11年間従事。2015年に株式会社グロープロフィット(不動産鑑定業・宅地建物取引業)を設立し代表取締役を務める。 趣味は水泳。好きな漫画は「進撃の巨人」。

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