相続財産の不動産査定でもめないためには?3つの査定方法を紹介

相続における不動産査定

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宅地建物取引士 監修 逆瀬川勇造

明治学院大学を卒業後、地方銀行にてリテール業務に従事し顧客の住宅ローンやカードローンなど担当。その後、住宅会社の営業部長として新築住宅の販売や土地開発等の業務に7年間従事しました。 Webを通して住宅や不動産の問題を解決することを志向し2018年10月に独立。 最近の趣味は子育てです。

相続財産の中に不動産がある場合、不動産査定を受けて時価を把握する必要があります。

こうした、相続財産の不動産査定はどのように進めるとよいのでしょうか。

本記事では、相続財産の不動産査定について自分で査定する方法や、不動産会社、不動産鑑定士に依頼する方法についてお伝えするとともに、それぞれのメリット・デメリットなどをお伝えしていきます。

不動産を複数の相続人で分けて持つことは難しい

相続財産の中に不動産が含まれていると、相続人の間で遺産を分割する際にもめやすいのです。

それの理由として、そもそも不動産が複数人で分けるのが難しい、という特徴が挙げられます。

もちろん、相続人全員で共有持分を持つことはできますが、たとえば実家を相続するとして、複数人で共有しても、兄弟全員で住むというようなことは多くの場合で現実的ではないですよね。

たとえば、相続財産全体が6,000万円で、その内訳が不動産4,000万円、そのほか(現金など)が2,000万円というケースを想定してみましょう。

兄弟が3人いたとして、長男が4,000万円の不動産を相続すると、2人で残りの1,000万円ずつを相続となり、不公平感が生じます。

こうした場合、長男は他の2人の兄弟に対して1,000万円ずつ代償金を支払うと公平になります。

上記のような例では、長男が他の兄弟に1,000万円ずつ支払えるだけの資力があるかどうかも問題ですが、どのようにして不動産の価格を4,000万円と評価したのかも問題になります。

長男としては、不動産の評価額ができるだけ低い方が代償金は少なくて済みますし、一方、ほかの2人の兄弟からすると代償金は少しでも高い方が受け取れる代償金が大きくなります。

こうしたことから、相続財産において、どのように不動産を査定するかは大事なことなのです。

相続財産を不動産査定する3つの方法

相続した不動産を査定する方法には、主に以下の3つの方法があります。

  • 自分で査定してみる
  • 不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する
  • 不動産会社に不動産査定を依頼する

ここでは、それぞれの概要をお伝えします。

1.自分で査定してみる

主に固定資産税評価額や相続税路線価など知識があまりなくてもすぐに調べられる公的価格をもとに自分で計算して、不動産の時価を算出します。

固定資産税評価額や相続税路線価はあくまでも課税額を決めるために定められているもので、固定資産税評価額については時価の7割程度、相続税路線価については時価の8割程度となるよう定められています。

つまり、固定資産税評価額÷70%、相続税路線価÷80%とすれば概ねの時価は把握できますが、いざ売却しようと思った時に必ずしもその価格で売却できないことも多いです。

おすすめ度 ★★★☆☆
査定の精度 ★☆☆☆☆
補足 第三者に頼むのでも一度は自分で査定すべき。

2.不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼すると、不動産鑑定評価書を受け取ることができます。

不動産鑑定評価書は、遺産分割協議等でもめた場合でも、裁判所に提出てきる公的な書類として活用できます。

ただ、有料であることから、誰がその費用を負担するのかの問題があります。

また、いざ売却しようと思った時に、必ずしも鑑定評価額で売却できるわけではありません。

おすすめ度 ★★☆☆☆
査定の精度 ★★★★★
補足 有料のためおすすめしない。ただし裁判の際に資料として提出できる。

3.不動産会社に不動産査定を依頼する

不動産会社に不動産査定を依頼する方法で、自分で査定するのと同じように固定資産税評価額や相続税路線価による判定も行われます。

普段から、不動産の売買を取り扱っているプロが査定を行うため、不動産の取引価格については信用が置けるでしょう。

また、不動産査定は無料で受けられるというメリットがありますが、鑑定評価書のように裁判の際に有効な書類としては活用できません。

おすすめ度 ★★★★★
査定の精度 ★★★★☆
補足 査定の精度を鑑定評価より下にしていますが、実際に売却する場合は不動産査定の方が精度が高くなる場合もあります。

自分で査定してみる

ここでは、自分で査定する場合のメリット・デメリットや具体的な計算方法等についてお伝えしていきます。

自分で査定することのメリット・デメリット

自分で査定することのメリットとしては、「無料で算出できる」ことと、「すぐに計算できる」ということが挙げられるでしょう。

一方、デメリットとしては「プロの査定と比べて価格に信用を置けない」といったことや「誰が査定するのかについて相続人間で了承を得られるか」といった問題があります。

自分で査定するとなった時、相続人の中にそうしたことに詳しい人がいればよいですが、そうでない場合は、誰かが勉強しながら査定を進めていくことになります。

また、その相続人が、他の相続人が無知であることをよいことに、自分に都合のよい査定を行わないとは限りません。

いずれにせよ、不公平感を覚えやすいことが問題だと言えるでしょう。

公的価格から査定額を算出する

自分査定する場合、まずは公的価格から査定額を算出するとよいでしょう。

不動産に関する公的価格には「公示地価」や「基準地価」、「相続税路線価」、「固定資産税評価額」があります。

なお、相続税の納税額を算出する際には、土地については「相続税路線価」を、建物については「固定資産税評価額」を使って算出します。

時価を把握する目的で査定を行うため、どの公的価格を用いてもよいのですが、相続税路線価と固定資産税評価額における計算方法から見ていきたいと思います。

相続税路線価から評価額を調べる

相続税路線価は、土地に面した道路の価格(路線価)に、土地の面積を掛け合わせて、土地の評価額を算出する方法です。

例えば、相続対象の土地の目の前の道路の路線価が100,000円/㎡で、土地の面積が200㎡だった場合、その土地の評価額は2,000万円と計算できます(実際には、土地の形等により補正を行います)。

相続税路線価は国税庁が毎年1月1日時点の評価額を7月1日に発表することとなっており、1年間の経済情勢の変化などを反映させることができないこともあります。

そのため、納税者間の不公平さをなくすために、時価の80%程度を目安に定めることとされています。

つまり、この場合、2,000万円÷80%=2,500万円を時価と計算します。

固定資産税評価額から評価額を調べる

固定資産税評価額は、固定資産税の算定のために、市町村が評価・発表するもので、毎年1月1日時点の所有者のもとに送付される固定資産税納付書で確認できるほか、市役所の窓口に行けば書面の閲覧や交付を受けることもできます。

固定資産税評価額は土地、建物すべての評価を行う必要があり、作業量が膨大なことから、3年に1度、評価替えがなされることとなっています。

3年の間に起こる経済情勢の変化などを反映させることができないため、納税者間の不公平をなくすよう、時価の70%程度を目安に定めることとされています。

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産であれば2,000万円÷70%=約2,857万円となります。

その他の公的価格で評価額を算出する

その他、公示地価や基準地価で時価を算出することもできます。

公示地価は毎年国土交通省が発表し、取引の指標となるよう価格が設定されるもので、評価額はそのまま時価と考えることができます。

公示地価では、全国26,000地点に設定された標準値の評価がなされるもので、自分の土地の評価を調べる際には、土地から近い標準値を選んで、その土地と面積や形等、相違点を補正する形で算出します。

なお、基準地価は都道府県が算出するもので、公示地価とほぼ同じ性質を持ちます。

相続財産の時価を自分で調べる

公的価格を調べた上で、自分で時価を調べるとより正確な価格を算出できるでしょう。

その際には、比較的簡単に算出できる「取引事例比較法」を用いると便利です。

取引事例比較法とは、対象の不動産の近隣の不動産を参考事例としてピックアップし、その不動産と、査定対象の不動産とのエリアや取引時期の違いを補正して算出する方法です。

自分で査定する場合は、査定についてはそこまで厳密に考える必要はないでしょう。

要は、査定対象の不動産と似た不動産はどんな価格で売買されているのかを確認できれば十分なのです。

価格を調べる際には、インターネットやチラシで物件情報を検索するか、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」などを利用します。

前者は、あくまでも売却価格であり実際に成約した価格ではありません。

一方、後者は実際の成約価格を調べられますが、取引時期の違い等を補正する必要があります。

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する

次に、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する方法についてメリット・デメリットや査定方法をお伝えします。

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するメリット・デメリット

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するメリットとしては、鑑定評価書は裁判所に公的資料として提出できる書類であるということが挙げられます。

一方、デメリットとしては費用がかかる点が挙げられます。

費用の相場は、多くの不動産鑑定事務所で使われている基本鑑定報酬額表(標準) を参考にするとよいでしょう。

基本鑑定報酬額表(標準)(抜粋)
鑑定額 宅地または建物 建物及びその敷地 区分所有権
1,500万円以下 19.6万円 31.6万円 41.5万円
2,000万円以下 22.6万円 34.7万円 49万円
2,500万円以下 24.9万円 37.7万円 54.6万円
3,000万円以下 26.4万円 40.7万円 58.4万円
4,000万円以下 28.6万円 45.2万円 64万円
5,000万円以下 31.6万円 49.7万円 69.7万円

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する方法では、3つの方法のうち唯一有料となってしまいます。

しかし、裁判の際に資料として提出できるほど信頼性の高い不動産鑑定書を作成することができるため、相続人の間で不公平感が生じにくいでしょう。

相続人の顔ぶれを見て、公平に進めなければトラブルに発展しそうであればこの方法を選ぶとよいかもしれません。

鑑定評価基準に基づいた査定方法

鑑定評価は、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて制定された不動産鑑定評価基準に沿って鑑定が行われます。

具体的には、先ほどご紹介した取引事例比較法の他、対象の不動産をもう一度再建築した場合にいくらかかるのかを算出する「原価法」や、対象の不動産が将来生み出すであろう収益に基づいて価格を算出する「収益還元法」を2つ以上組み合わせて鑑定します。

ある程度法律で定められた手順で鑑定が行われていきますが、どの不動産を事例として取り上げるかなどに違いが出るため、どの不動産鑑定士に依頼するかで鑑定評価額は異なります。

不動産会社に不動産査定を依頼する

最後に、不動産会社に不動産査定を依頼する方法について、そのメリット・デメリットや査定方法について見ていきたいと思います。

不動産会社に不動産査定を依頼するメリット・デメリット

不動産会社に査定を依頼するメリットとしては、いざ売却するとなった場合にそのまま依頼できる点、無料で査定を受けられる点が挙げられます。

一方、デメリットとしては鑑定評価書のように裁判資料として活用することはできない点などが挙げられるでしょう。

また、不動産会社に相続財産の査定を依頼する際、無料で依頼できるのですが、不動産会社としては本当に無料で査定するだけでは何も得られるものがないため、基本的には売却に向けた営業がなされると考えた方がよいでしょう。

将来的にでも、実際に売却する気があるのであればよいのですが、そうでない場合にはそもそも依頼すべきではないかもしれません。

不動産会社の不動産査定方法

不動産会社への不動産査定では、机上査定か訪問査定かを選ぶことができます。

机上査定とは、謄本や建築図面など各種書面から不動産の価格を算出する方法です。

一方、訪問査定とは実際に現地に訪れて、建物の劣化具合や駅から現地までの雰囲気や環境なども含めて「実際に売れる価格はいくらか」という視点で査定を受けることができます。

なお、実際の査定については、自分で査定する方法でお伝えした、公的価格による査定や、不動産鑑定士による査定方法でお伝えした、取引事例比較法や原価法、収益還元法を用いた査定も行います。

「自分で査定した上で、その査定額が正しいかどうかを確かめるために、机上査定を依頼する」といった使い方や、「将来の売却も見据えて、最初から訪問査定を依頼する」といった使い方が考えられます。

不動産鑑定士による鑑定評価と同じく、どの不動産会社に査定を依頼するかによって査定額が異なります。

不動産会社による査定は無料で受けられるため、複数の不動産会社に査定を依頼するのもよいでしょう。

その際は、一括査定サイトなど活用すると便利です。

まとめ

相続財産の中に不動産が含まれている場合の不動産査定についてお伝えしました。

遺産分割協議の際、相続財産に不動産が含まれていると、分割方法や評価額の算出方法でもめることが少なくありません。

将来、余計なトラブルに発展してしまうのを避けるためにも、不動産の査定方法には多様な方法があり、またそれぞれの方法にはどのようなメリット・デメリットがあるかを知っておくとよいでしょう。

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