農地の売却方法とは?2つの方法と注意点を解説

2019.01.21投稿 不動産売却のことなら【すまいうる】
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コンサルタント

監修 中村昌弘

農地は通常の不動産と売却の流れが異なります。不動産売却の中でも特殊な部類に入るため、農地の売却を検討している人は戸惑っているのではないでしょうか。

この記事では、そんな農地の売却について以下を解説していきます。

この記事ではこんな悩みを解決します!

  • 農地転用とは?農地転用して売却する方法とは?
  • 農地のまま売却する方法は?
  • 農地を売却するときの流れや必要書類は?

ほかにも、農地の売買事例から農地の相場金額を紹介し、税金についても解説していきます。

筆者は元々マンションディベロッパーに勤務しており、不動産の仲介を行ってきました。今回は、その経験を活かし解説していきます。

土地の査定を依頼する

農地を売却する方法は大別して2パターンある

そもそも農地とは、土地の地目が「田」や「畑」などになっている土地のことです。土地には地目が決まっており、宅地や雑種地、ほかにも山林や公園、牧場など色々な種類があります。

その地目によって、建築できる建物などが制限されているというわけです。一般的な住宅は宅地になりますが、農地売却は宅地売却よりも規制が厳しくなっています。

農地を売却する方法を大別すると以下2通りあります。

  • 農地転用で売却
  • 農地のまま売却

「農地転用で売却」とは、農地(田・畑)の地目を変更してから売却するという方法です。一方、「農地のまま売却」とは、農家など農業関係者に地目を農地(田・畑)のまま売るということです。

農地を宅地として売却するケースでは前者の方法で、宅地として利用できる分、後者の方法より売却価格は高くなりやすいです。

農地売買の大まかな流れ

農地の売却と通常の不動産売却の違う点は、農地委員会の許可が必要ということです。

まず、通常の不動産売却の流れは以下の通りです。

  1. 不動産会社に査定依頼
  2. 売却を依頼する不動産会社の選定
  3. 選定した不動産会社と媒介契約の締結
  4. 売却活動&交渉
  5. 売買契約&申込
  6. 物件の引渡し(決済)

農地売買は、上記の流れの「前」に農地委員会の許可が必要になります。

というのも、日本が食料を自給するために農地を一定規模を残しておくことが国策として決まっており、農地委員会がきちんと管理しているからです。

そのため、前項で解説した2つの売却方法は、どちらも農地委員会の許可が必要です。

農業委員会を通さずに自由に売買してしまうと農地が減少し、有事の際に自給できなくなってしまうというのが理由です。

売却方法1.農地を宅地・雑種地などに転用する

では、ここから具体的な売却方法を解説します。まず1つ目の方法は、農地を宅地や雑種地などに転用してから売却する方法です。なお、転用後の売却は通常の不動産売却と同様になります。

農地転用とは何か

農地を転用するとは、「農地」という用途を変更することで、農地に関する規制を外してから売却するということです。

上述したように、日本で食料を自給できるように農地法が存在するため、農地の用途を変更することで農地法の適用外にするというわけです。

農地転用の許可が下りないパターン

ただし、そう簡単に農地からの転用を認めてしまえば、そもそも農地法によって農地を守っている意味がなくなります。

そのため、農地転用にも制限があり、以下のような場合には農地転用の許可が下りません。

  • 農用地区域内または集団的農地内にあるもの
  • 転用資金がない
  • 今までに農地法違反を犯したことがある
  • 家を建てる計画が具体化していない
  • 周辺の農地や用水に重大な支障を及ぼす恐れがあるとき

自分の売ろうとしている土地が、農用地区域内または集団的農地内かどうかは役所か農業委員会へ連絡すれば分かります。

もし、その区域内であれば転用の許可は基本的に下りません。後述しますが、特別な申請が必要です。

また、転用には資金がかかるのでその資金がない場合や、農地法の違反履歴がある場合も許可が下りません。そして、その土地を宅地として売却するとき、具体的に家を建てる計画がないときも許可は下りません。

ほかにも、転用することで周辺の農地に支障が出る場合も、農地を守るという観点から転用の許可が出ないというわけです。

このように、農地を守るために転用を簡単に許可するわけではなく、許可が下りないパターンもある点は認識しておきましょう。

権利者の同意を得る必要があるパターン

転用時に権利者の同意を得る必要があるパターンは以下のとおりです。

  • 銀行などの抵当権が設定されているもの
  • 農地を貸しているもの

仮に、農地に銀行のローンがまだ残っている場合は、その土地に担保設定がされています。その担保の用途が変わるということは資産価値が変わるということなので、銀行の許可が必要というわけです。

また、農地に「使用賃借権」「賃借権」を設定して第三者に貸しているときも、実際に利用している権利者の同意が必要になります。

農地転用の申請方法

農地転用をするときは申請が必要です。

ここでは、

  • 依頼先
  • 申請に必要な書類
  • 実際の手続きの流れ

について紹介します。

依頼先

農地転用は自分でも手続きできますが、手続きが複雑なので委任状を利用して不動産会社や司法書士に委任するケースが多いです。

多少費用はかかりますが、手間を考えると農地転用経験がある不動産会社や司法書士に依頼した方が良いでしょう。

申請に必要な書類

申請に必要な書類は以下です。

  • 登記簿謄本
  • 土地の位置図
  • 銀行の残高証明書や融資証明書
  • 委任状
  • 住民票
  • 建物立面図

登記簿謄本は法務局で取得でき、1,000円~2,000円ほどで取得代行を依頼することもできます。「位置図」とは、役所などで購入できる都市計画図などです。

銀行の残高証明書や融資証明書は、上述した「転用資金があること」を証明するための書類です。委任状は前項の司法書士などの委任時に必要で、司法書士や不動産会社側が用意してくれます。

ほかにも住民票や、農地転用後に建物を建築する場合にはその建物の立面図が必要です。これらの書類に関しては、司法書士や不動産会社にヒアリングしながら取得するようにしましょう。

実際の農地転用手続きの流れ

さて、必要書類が集まったら、以下の流れで手続きを行います。

  1. 農業委員会に農地転用の申請
  2. 農業委員会による審査
  3. 許可通知

上述した農業委員会に申請すると、農業委員会総会に議案としてかけられます。そして、申請書や書類、現地確認などの審査を経て許可を受けるという流れです。

もちろん、農地転用できないと認められた場合は不許可になることもあります。この申請~許可通知までの一連の手続きには、大体1.5カ月~2.5カ月ほどの時間がかかります。

農用地区域内の転用は原則NG!農振除外という手続きが必要になる

上述したように、自分の売ろうとしている土地が農用地区域内にあるかどうかは、役所や農業委員会にヒアリングすれば分かります。

農業地域ではない普通の市街化区域であれば、前項までの流れで良いですが、農業地域内であれば話は別です。

というのも、農業地域内は原則農地転用NGなので、農地転用したい場合には市町村に「農振除外」という手続きが必要だからです。

要は、原則転用NGである農業地域内であるものの、特別に許可して転用を認めてもらう手続きです。

市街化区域であれば不許可要件がない限り許可は下りますが、農業地域内ではそう簡単な話ではありません。

たとえば、転用理由の必要性がないと判断されたり、場所的に農地の真ん中であったりする場合は農地転用不許可になります。また、許可が出るとしても例外的に1年以上の期間かかるケースもあるのです。

農地転用は税金に注意!

農地を転用すると固定資産税・都市計画税(固都税)が上がる点には注意です。
実は、農地の場合には固都税が大幅に優遇されています。農地転用で宅地や雑種地にすると、税額は通常の「固定資産税評価額×1.4%」になります。

ランニングコストとしての税金が大幅に増額するケースもあるので、農地転用後の固都税が実際にいくらになるか不動産会社にシミュレーションしてもらいましょう。

売却方法2.農地のまま売却する方法

次に農地のまま売却する方法を解説します。

ここでは、以下について紹介します。

  • 農地は買主が限られる
  • 農地を売却するときの手続き
  • 農地売却の許可申請の流れ
  • 売却時の依頼先

農地は買主が限られる

農地は地目が田畑なので、誰にでも売れるわけではなく農家や農業生産法人に限られます。さらに、売る相手が農家であっても、以下のような規定を満たしている必要があります。

  • 農業に必要な機械を所有している
  • 従事する人数は適当か
  • 常時農業を営んでいる

要は、農地を農地として売却して、きちんと農地として役目を果たさないと意味がないわけです。

農地を売却するときの必要書類

農地を売却するときに必要な書類は以下です。

  • 登記簿謄本
  • 土地の位置図
  • 委任状
  • 住民票
  • 農家証明書
  • 法人定款の写し
  • 組合員、株主名簿

農地転用のときと異なる書類は、後半3つの書類です。農家証明書は、農家に売却するときに必要で、買主である農家自身が農業委員会へ発行手続きをします。

法人定款は買主が法人である場合に買主から取得し、組合員・株主名簿は農業生産法人が買主のときに生産法人からもらう書類です。

農地売却の許可申請の流れ

農地を農地として売却するときの流れは以下の通りです。

  1. 農業委員会へ許可申請
  2. 買主の状況などを含め審査
  3. 審査後に許可

流れとしては農地転用のときと同じ流れですが、買主の調査が入るのが異なる点です。買主の調査とは、「農地は買主が限られる」で解説した条件を満たしているかを確認する調査です。

売却時の依頼先

農地を農地として売却するときも、通常の不動産売却と同じく不動産会社に仲介を依頼します。

ただし、農地手続きが必要になるため、「農地を売却した経験」があることが望ましいでしょう。農地売却の際はその視点で不動産会社を選定しましょう。

農業委員会から許可が下りない場合はどうなる?

農地転用、および農地を農地として売却するときに、農業委員会から許可が下りない場合もあります。

その原因と対策はケースバイケースですが、良くある事例と対策は以下の通りです。

添付書類に不備がある場合

添付書類に不備があり、不許可の場合は窓口受付段階で是正指導が入ります。

その指導に沿って再提出するという流れです。

申請地がすでに農地の状態でない場合

これは、農地を農地として売る場合の話です。

この状態では農地として役割を果たせないので、原状回復をして農地に戻してから再度申請します。

買主が不適当と見なされた場合

これも農地を農地として売却する場合の話です。上述したように買主にも条件があるので、その条件に満たないといけません。

農地委員会の指摘事項をヒアリングし、買主側に条件を満たすように改善してもらうか、条件を満たす新たな買主を探してから再度申請します。

農地売買でかかる費用(手数料など)

農地売買でかかる費用は以下の通りです。

  • 仲介手数料
  • 登記関係費用
  • 司法書士への報酬
  • 譲渡所得税

仲介手数料は、通常と同じく物件価格が400万円超であれば「売買価格×3%+6万円」が一般的です。

仮に、ローンが残っていれば抵当権抹消登記があるので、概ね10万円程度(※)でしょう。
※登録免許税が1物件1,000円+司法書士報酬が5~10万円

また、農地転用時に司法書士に手続きを委任すると、10万円前後の費用がかかります。

譲渡所得税に関しては以下で詳しく解説します。

譲渡所得の計算

農地の譲渡所得は以下の計算式で計算します。

譲渡所得=(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の不動産価格+購入時にかかった諸費用)

要は、売買時の価格に諸費用を加味するというわけです。この金額がプラスであれば「所得」と見なされ、譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税は、上記の式で求めた譲渡所得額に税率をかけて算出できます。かける税率は、次の章で紹介します。

譲渡所得税率

譲渡所得税率はほかの不動産と同様、農地を売却した年の1月1日時点で5年超保有(長期保有)していたか、5年以下(短期保有)かで税率は異なります。

長期所有のとき(5年超) 短期所得のとき(5年以下)
所得税 譲渡所得×15% 譲渡所得×30%
復興特別所得税 上記の所得税額×2.1% 上記の所得税額×2.1%
住民税 譲渡所得額×5% 譲渡所得額×9%

農地売却の特別控除

ただ、農地の場合は以下のように譲渡所得が控除になるケースがあります。控除になるとは、譲渡所得額からマイナスするということです。

800万円控除

800万円控除になるケースは以下です。

  • 農用地区域内の農地を農用地利用集積計画又は農業委員会のあっせん等により譲渡した場合
  • 農用地区域内の農地を農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体に譲渡した場合
1,500万円控除

1,500万円控除になるケースは、農用地区域内の農地等を農業経営基盤強化促進法の買入協議により農地中間管理機構に譲渡した場合です。

5,000万円控除

5,000万円控除になるケースは、農地が土地収用法等により買い取られる場合(転用目的の譲渡)です。

控除条件などの詳細は、不動産会社、司法書士、そして税務署に確認することをおすすめします。

農地の売買相場(実際の事例紹介)

さいごに、農地の売買相場を平成29年~30年の事例を基に、東京・大阪の事例を紹介します。

調べ方は、不動産取引価格情報のサイト(土地総合情報システム:国交省)へいき、都道府県を選択して「農地」で検索するだけです。非常に簡単なので、自分の調べたいエリアで検索をかけてみましょう。

東京の農地売買相場

東京の農地売買事例は以下の通りです。

  • 八王子市打越町:成約価格150万円(165m²)、成約時期H29/07-09月
  • 八王子市川口町:成約価格1,000万円(1,500m²)、成約時期H30/04-06月
  • 町田市小野路町:成約価格440万円(280m²)、成約時期H29/10-12月
  • 西多摩郡瑞穂町:成約価格1,100万円(1,800m²)、成約時期H30/04-06月

大阪の農地売買相場

大阪の農地売買事例は以下の通りです。

  • 堺市東区石原町:成約価格160万円(740m²)、成約時期H29/10-12月
  • 堺市東区日置荘原寺町:成約価格1,200万円(770m²)、成約時期H30/04-06月
  • 堺市美原区多治井:成約価格500万円(990m²)、成約時期 H29/10-12月
  • 岸和田市稲葉町:成約価格220万円(1,200m²)、成約時期 H29/10-12月

まとめ

それでは、今回解説した「農地の売却」について、覚えておくべきことをおさらいしましょう。

記事のおさらい

  • 農地を売却する際は必ず農地委員会の許可が必要
  • 1つ目の方法は農地転用してから売却する
  • 2つ目の方法は農地のまま売却する
  • いずれのケースにしても売却の流れが特殊なので注意

農地を宅地として売却したいのであれば、農地転用をして地目を変える必要があります。ただし、不許可要件に該当すると転用は認められません。

この辺りの手続きは複雑なので、慣れている不動産会社、もしくは司法書士に委任した方が良いでしょう。

また、農地を農地のまま売却するときも許可が必要であり、買い手側も審査される点は覚えておきましょう。いずれにしろ、通常の不動産売却よりも手間がかかるので、早めに始動しておくことをおすすめします。

監修の中村昌弘さんの写真

コンサルタント

監修 中村昌弘

宅地建物取引士

新卒で不動産ディベロッパーに勤務し、用地仕入れ・営業・仲介など、不動産事業全般を経験。入居用不動産にも投資用不動産にも知見は明るい。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。趣味は読書。好きな作家は村上春樹、石原慎太郎。

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