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宅地建物取引士 監修 逆瀬川勇造
明治学院大学を卒業後、地方銀行にてリテール業務に従事し顧客の住宅ローンやカードローンなど担当。その後、住宅会社の営業部長として新築住宅の販売や土地開発等の業務に7年間従事しました。 Webを通して住宅や不動産の問題を解決することを志向し2018年10月に独立。 最近の趣味は子育てです。
建物のある状態で土地を売却する場合、建物を残したまま売却するのか、建物を解体して更地にして売却するのかではどちらがよいのでしょうか。
建物を解体すると、当然のことながら解体費用がかかりますし、解体したあと土地を整地する費用もかかることがあります。
大きな出費となってしまいますが、これは購入する側からしても同じことです。購入してから大きな出費があり、その額が読めないとなるとなかなか購入しようという気持ちになりません。
一方で、まだ使えないこともない建物を解体することで、建物にしばらく住んでから将来的に解体して建て替えしたいといった方を逃すことにもなってしまいます。
今回は、こうした問題について考えるために、建物の売却費用やその取り扱い、注意点などについてお伝えしていきます。
この記事の目次
建物解体費用の相場(木造/鉄骨造/RC造)
建物の解体費用は、もちろん実際には現場により費用が異なるのですが、一定の相場があります。建物解体費用の相場は構造ごとに異なり、構造ごとの解体費用の相場を示すと以下のようになります。
構造 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
---|---|---|---|
坪単価 | 3~5万円 | 4~6万円 | 4~7万円 |
30坪の建物 | 90~150万円 | 120~180万円 | 120~210万円 |
50坪の建物 | 150~250万円 | 200~300万円 | 200~350万円 |
坪単価で表すと上記の通りですが、一般的に坪数が小さければ小さい程坪単価は高くなり、逆に坪数が大きければ大きいほど坪単価は安くなる傾向にあります。
また、現場から廃材を運び出して廃棄する場所までの移動距離や、中の荷物を残すかどうかなどによっても金額が変わります。
土地売却における解体費用の取り扱い
建物を売却前に解体する場合、当然のことながらその費用は売主が負担することになりますが、このかかった解体費用についてはどのような取り扱いになるのでしょうか。
解体費用は土地価格に上乗せしないほうが良い
例えば、1,000万円で売却する予定だった古家付きの土地を、売却前に100万円かけて古家を解体する場合、解体費用の100万円を売却代金に上乗せしてもよいのでしょうか。
上乗せするかどうかは売主の自由ではありますが、一般的には1,000万円の売却代金が近隣の相場だったとして、そこから解体費用を上乗せすると売りづらくなるのが一般的です。
基本的には、解体費用は売却するための必要経費だと考える必要があるでしょう。
なお、不動産を売却したあとの譲渡所得税の計算では、解体費用を必要経費(譲渡費用)として所得から差し引き、納税額を減らすことができます。
※参考サイト:No.3255 譲渡費用となるもの(国税庁)
例えば、不動産を売却して1,000万円の利益があった場合、(その他の要素を無視すると)支払わなければならない税金は200万円程度です。もし解体費用としてかかった100万円を譲渡費用として計上すると、課税対象の所得は1,000万円-100万円=900万円になります。この場合、税率がおよそ20%で180万円程度の納税額にすることができます。
解体更地渡しと現状渡しでは解体費用の取り扱いが異なる
建物を解体せずに古家付きの土地として売却する際には、「解体更地渡し」とする方法と「現状渡し」とする方法の2つがあります。
解体更地渡しは、売買契約が決まってから売主が建物を解体する方法です。一方、現状渡しは建物を解体することなく引渡し、解体などは買主が行うことになります。
解体更地渡しは、売却前に解体する方法と同じで「解体費用は必要経費」として考える必要があります。
この方法では、仮に買主が建物をそのまま使いたいと言えばそうすることができます。しかし、建物が残ったままでは土地全体をイメージしづらく、新築用地を探している人からは敬遠されることがあります。
一方、現状渡しでは買主が建物の解体費用を負担することが前提なので、解体費用分程度を相場価格から差し引く必要があるでしょう。買主が建物をそのまま使いたいという場合には、比較的割安で古家付きの土地を購入できるチャンスと考えられます。
更地 | 解体更地渡し | 現状渡し | |
---|---|---|---|
解体のタイミング | 売却前 | 売却後 | しない |
解体費用負担 | 売主 | 売主 | 買主(する場合) |
土地売却において建物を解体する際の注意点
土地の売却で建物を解体する際の注意点として、次の2点があります。
- 建物がなくなると固定資産税が最大6倍になる
- 解体費用をローンで借りると金利が高い
それぞれ具体的に説明していきます。
固定資産税が最大6倍になる
土地の固定資産税は、建物が建っていると「小規模住宅用地の特例」の適用を受けることができます。200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は税金が6分の1に、200㎡超の部分(一般住宅用地)は3分の1になります。
また、都市計画税についても同じ特例の適用が可能です。都市計画税の場合は小規模住宅用地で3分の1に、一般住宅用地で3分の2に軽減されます。
小規模住宅用地の特例の適用を受ける条件は、建物が建っていることです。つまり、建物を解体すると特例の適用を受けることができなくなり、負担額が最大で6倍にまでなってしまいます。
土地の売却前に建物を解体する場合、すぐに売却できればよいですが売却が長引いてしまうとそれだけ固定資産税の負担が大きくなるため注意が必要です。
解体費用をローンで借りると金利が高い
買主は、建物建築にあたって必要な解体費用を住宅ローンの一部として利用できます。(ローンの種類による)
一方、売主が解体費用を借りる場合はリフォームローンなどを利用することになります。金利は2~3%程度と、住宅ローンと比べると金利負担は2~3倍です。
売買が成立すれば、後程振り込まれる売却代金で補填できるため、手元にまとまったお金のある場合は現金で支払った方が金利負担なく進められます。
建物解体後の売却をオススメする3つの理由
古家付きの土地について、建物を解体してから売却するのか、建物が乗ったまま売却するのかには明確な答えはありません。
しかし、筆者の経験上、建物を解体してから売却した方が売れやすい傾向にあります。それには以下のような理由があります。
- 解体費用を経費(譲渡費用)にできる
- 買主がイメージしやすい
- 売買時に価格交渉しやすい
①解体費用を経費(譲渡費用)にできる
1つ目は、これは売れやすい理由ではありませんが、相場通りの価格で売ったとしても、その費用負担分を売却代金にかかる税金の経費とすることができます。負担した解体費用については、土地代金に上乗せなどするとなかなか売れないので注意が必要です。
ただし、マイホームの売却の場合は「3,000万円特別控除」の適用を受けられるため、3,000万円以下の土地の売却においては①を理由とする意味はなくなります。
②買主がイメージしやすい
2つ目は買主が土地の広さや形状をイメージしやすいということです。
実際に解体前の土地と、解体後の土地を見比べてみると分かりますが、土地の上に建物が乗っていると土地が小さく感じてしまうことが少なくありません。
一方、更地の状態であれば大きさを把握しやすいだけでなく、玄関の位置や庭の位置、駐車場の位置などを新築前からイメージしやすいでしょう。
土地からの新築を考えられている方は、一生に一度の借金(住宅ローン)を組んで土地を購入しようと考えられており、1つでも不安を感じる土地を購入しようとは思わないものです。
③売買時に価格交渉しやすい
3つ目は、価格交渉の面です。
建物の解体や整地は、実際に始めてみないといくらの費用がかかるか分からないものです。
解体してみたら土が足りなくて土を追加しないといけなくなったり、隣地との間にあったブロックが不安定になったから補強しないといけなくなったりすることもあります。
売主、または売主側の不動産会社から解体費用や整地費用は○○円ですとお伝えすることができればよいのですが、それも難しいのです。
そうしたこともあり、買主は解体費用の最大金額を想定します。結果、想定金額が予算をオーバーすると値引きを要求したり、値引きできなければ購入を諦めたりすることもあります。
売主が先に建物を解体しておけば、上記のようなことは解決することができ、買主の購入の意思決定を早めることにつながりやすいです。
建物を解体して更地で売却した方がよいケース
以下で、建物を解体して更地で売却した方がよいケースと、建物を解体せず古家付きのまま売却してもよいケースについてお伝えしていきます。
建物を解体しても更地で売却した方がよいケースにはどのようなものがあるのでしょうか?
昭和55年以前に建てられた建物であるケース
1つ目が、昭和55年以前の建物、つまり、旧耐震基準で建てられた建物が乗っている土地のケースです。
古家でも、土地付きで安ければリフォームして住みたいと思う方もいらっしゃるでしょうが、どんなにリフォームを施しても改善しづらいのが耐震性(基礎)です。
昨今では購入者の地震に対する関心度も高くなっているので、旧耐震基準で建てられた建物が建っている場合には解体してしまって、土地だけで売却した方が売りやすいと言えるでしょう。
売れづらい立地にあるケース
先に売主で解体してから売却するデメリットは、売主が費用を負担しなければならない点です。
しかし、ただでさえ立地が悪く売れづらい土地を売却しようと思っているのであれば、売れやすくなる努力(=解体)はするべきです。
ただし、最終的に売れない可能性のある立地だと解体費用が無駄になるのと、売却が長引くと固定資産税の負担も大きくなってしまう点には注意が必要です。
建物を解体せず売却してもよいケース
一方、売主が建物を解体せず売却してもよいケースには以下のようなものがあります。
建物が築10年以内程度の土地を売却するケース
建物が築10年以内程度であれば、建物ごと購入してそのまま住むか、最初は住んで将来的な建て替えを検討するという余地があるため、解体せずそのまま売却してもよいでしょう。
ただし、2018年現在、中古住宅の流通はそう多くありません。中古の建物を探している層はできるだけ安く住居を買いたいと思っている層である可能性が高く、一方で新築を探している層は、そもそも中古住宅を考えていない可能性が高いです。
つまり、中古住宅として魅力のある物件であったとしても、新築住宅を探している人にその情報を届けられない可能性があります。そのため、地域性を考慮して慎重に検討する必要があります。
立地がよい土地を売却するケース
立地がよい土地であれば、売主が強気に売却を進めやすいです。
売却前に建物を解体するのは、どちらかと言えば「土地を買ってもらうためにする」行為で、そもそも土地に魅力があれば古家付きのままでも売却できる可能性は高いです。
この場合、古家付きのまま土地の売却を始めてしまった方がお得になることが多いでしょう。
不動産会社への売却を検討しているケース
不動産会社の売却を検討しているケースでは売主が更地にする必要はありません。
購入する側はプロなので、「解体されていないとイメージできない」などとは言わないでしょう。むしろ、売主側が余計な経費を負担して売却価格を下げづらくするよりも、古家付きのまま購入して、できるだけ安く解体し、少しでも多く利益を稼ぎたいと考えています。
なお、不動産会社の買取は一般の仲介による売却より、価格が安くなるのが一般的なのでその点には注意が必要です。
まとめ
記事のおさらい
- 一般的に解体費用は土地価格に上乗せしないほうが良い
- 土地の売却で建物を解体する際は費用負担に注意
- しかし、建物を解体してから売却した方が売れやすい傾向にある
- 不動産会社の売却を検討しているケースでは売主が更地にする必要はなし
土地売却における解体について、解体費用やその取り扱い、更地で売却するのがよいのか、古家付土地のままで売却するのがよいのかなどについてお伝えしてきました。
「建物を解体して更地で売却するのがよいのか」、「建物を解体せず古家付土地のまま売却するのがよいのか」についての答えはありません。
最終的には所有者のあなたが決断しないといけないことですが、その判断材料として本記事の内容が参考になれば幸いです。
土地売却の基礎知識や、流れの詳細については、下記の記事で確認しましょう。
宅地建物取引士 監修 逆瀬川勇造
明治学院大学を卒業後、地方銀行にてリテール業務に従事し顧客の住宅ローンやカードローンなど担当。その後、住宅会社の営業部長として新築住宅の販売や土地開発等の業務に7年間従事しました。 Webを通して住宅や不動産の問題を解決することを志向し2018年10月に独立。 最近の趣味は子育てです。