住み替えによる家売却は要注意!失敗しない売却・購入の流れとコツ
2019.08.02投稿家売却で住み替えが伴うと、通常の売却とは手順も注意点も違います。
今の家を売って、新しい家に住み替えたい場合は、家の売却と購入を同時期に行う、もしくはどちらかを優先してすることになるでしょう。
住み替えによるリスクは、売却を先にする売り先行か、購入を先にする買い先行かで異なります。なので、それぞれの概要やメリット・デメリットを理解しなければいけません。
この記事では、家売却に伴う住み替えについて、以下の点を解説していきます。
この記事ではこんな悩みを解決します!
- 売り先行と買い先行の違いとは?
- 売り先行と買い先行のどちらが良いの?
- 家を住み替える際の注意点が知りたい
筆者は、元々マンションディベロッパーの営業マンであり、今まで多くのマンションを仲介してきました。
その中で、住み替えが伴う家売却の仲介をした経験もあります。
今回は、そんな経験を元に「住み替えが伴う家の売却」について詳しく執筆していくので、家の住み替えを検討している方は参考にしてみてください。
住み替え時の家売却の流れは2種類
住み替えには「売り先行」と「買い先行」があります。
- 売却を先にすることを「売り先行」
- 購入を先にすることを「買い先行」
2種類の流れを知っておくことで、後述するそれぞれのメリット・デメリットが分かってきます。
これから「売り先行」か「買い先行」かを決めなきゃいけないんだね。
ひなペンギン
ペンギン先生
そうだよ。でもまずは売却の流れと購入の流れを確認しておこう!
住み替え完了までにかかる時間は、一般的には3か月~半年程度と考えておきましょう。
「売り先行」の特徴
家の売却を優先する「売り先行」の場合、売却益を購入資金にあてることができます。
そのため「資金計画」が立てやすいメリットがあります。また、売却に時間をかけることができるため、売り急ぎにならず家を高く売ることができます。
なるべく高い金額で売却したい場合は、売り先行がオススメです。
ただし、売却の引き渡し時に住み替え先が見つかっていない場合は、仮住まいになる可能性もあります。
もちろん売却した物件と購入した物件の売買契約や引渡し日が同じ日になることはあるかもしれません。
ただ、売り先行の場合には、基本的に売却する家の売買契約と引渡しをしてから、新しい家の売買契約を結び、引渡しを受けます。仮住まいのリスクは考えておきましょう。
「買い先行」の特徴
購入を優先する「買い先行」の場合、新しい家をじっくり探すことができます。
一方で、購入した家に入居する段階で売却が進んでいない場合、住宅ローンを二重に払うことになるため、資金計画は必須です。
気に入った家に住みたい!今の家はまだきれいだし、そこそこの値段で売れるかな…。
ひなペンギン
ペンギン先生
お金に余裕がある場合は、買い先行でも大丈夫だよ。でも売却金額をあてにして、奮発した家を買うのはオススメしないなあ。今の家が想像していた値段で売れなかった場合が大変だからね。
こちらも、新居と売却する物件の売買契約と引渡しが同日になる場合もあります。
ただ、基本的には新しい家の売買契約を結び引渡しを受けた後に、売却する家の売買契約の締結・引渡しを行います。
買い先行の場合、資金計画と住宅ローンが二重にかかるリスクについては考えておきましょう。
住み替えは「売り先行」がおすすめ!買い先行との比較
次に、前項で解説した売り先行と買い先行を比較してみます。
結論からいうと、売り先行の方が無難でオススメです。
でもせっかくの住み替えだし、新しい家を先に決めたいなぁ。
ひなペンギン
ペンギン先生
お金に余裕がある場合なら購入が先でも大丈夫だけど、売却を先にする方が資金計画しやすいんだ。先に購入しても売却がうまくいかないと住宅ローンが苦しい…なんてこともあるからね。
「売り先行」がオススメである最大の理由は、資金計画のしやすさです。
最初にまとまった資金があると、資金計画も立てやすく、住み替え先選びに失敗する可能性も少なくなるからです。
また売り先行は住居費がダブルでかかることもありません。買い先行は住居費が一定期間ダブルでかかることがあります。
その点を含め、売り先行と買い先行を比較した表が以下になります。
売り先行 | 買い先行 | |
---|---|---|
資金計画の立てやすさ | 立てやすい | 立てにくい |
住居費(住宅ローン)の発生 | 問題なし | ダブルでかかるリスクあり |
融資の付きやすさ | 付きやすい | 付きにくい |
仮住まいになるリスク | リスクあり | リスクなし |
1.「売り先行」は資金計画が立てやすい!
住み替えの場合、売却と購入の2種類の諸費用がかかりますし、何より今住んでいる家がいくらで売れるかは不確定です。
そのため、売り先行にしないと資金計画が立てにくくなります。
売り先行は成約価格が確定する
売り先行の場合、今住んでいる家の売却が終わっているということなので、今の家がいくらで成約しているかが分かります。
たとえば、住宅ローンの残債が3,000万円あり成約価格も3,000万円であれば、手持ち資金を捻出して残債を完済する必要はありません。
売却金額が明確だから、新しい生活をするのにいくらまでお金を使えるか考えやすくなりそう…!
ひなペンギン
ペンギン先生
そうだね。手元にいくら残るのかわかると、資金計画や新居の予算を決めやすくなるよ。
売却時の諸費用も確定するので、手元に残っている資金が明確であり、その資金を元に新居の予算を組むことができます。
買い先行は成約価格が分からない
一方、買い先行の場合は今住んでいる家がいくらで売れるか分かりません。
え、でも査定に出したら3,000万円って言われたよ。
ひなペンギン
ペンギン先生
査定価格は不動産会社が売れそうだと思う価格であって、その値段で確実に売れる保証はないんだ。
たとえば、前項と同じく残債が3,000万円あり、査定額も3,000万円だったとします。
もちろん、3,000万円で成約すれば問題ありませんが、仮に2,900万円の成約価格であれば完済まで100万円足りません。
そのため、手持ち資金で100万円捻出する必要があるということです。
ということは、その100万円を考えず新居の予算組みをしていれば、資金計画が狂ってしまいます。
逆に、査定額以下で成約することを見越して新居の予算組みをしている場合、実際に査定額通りで成約すれば、もっと自分の条件に合った家を買えたかもしれません。
このように、買い先行の場合は資金計画を立てにくいというデメリットもあるのです。
2.「売り先行」は住居費がダブらない!
売り先行の場合は、売却する家の住宅ローンが残っていても、売却によって残債はゼロになります。
ペンギン先生
ちなみに、残債がゼロになる状態でないと家は売却できないから要注意だよ。家のローンが払えない場合の売却は住み替えローンを使うか、「家のローンを払えない際の売却方法」の記事を参考にしよう!
売買時の諸費用はかかりますが、「ローンの支払い」などの住居費は新居にしかかからないので、金銭的な負担はさほど気にしなくても良いです。
一方、買い先行の場合は「売却している物件」と「新居」の住居費がダブルでかかる可能性が高いです。
たとえば、新しい物件のローン支払いが4/25から発生し、売却する家が同じ年の8月末に売れ、ローンの支払いが7/25まで発生していたとします。
その場合、4月~7月の4か月間はダブルで住居費(ローン支払い)が発生しており、売却する家のローン支払いが月々13万円であれば52万円もの支出増になるということです。
場合によってはもっと長期間で支出増になるかもしれませんし、「早く売らないと…」と焦って値引きに応じれば、金銭的な損失はさらに大きくなります。
う、売れると思ったんだ…早く売らないといけないの?値下げかなあ…て考えただけでイヤになっちゃった…。
ひなペンギン
ペンギン先生
金銭的な負担が多いうえに「いつ終わるのかわからない」不安もあるよね。無理な値下げをしたりして、損をすることが多いから気をつけてね。
この「住居費がダブルでかかるリスク」は金銭的な負担が多い上に、「いつ終わるか分からない」という気持ち面でも大きなリスクがあるので、買い先行ではなく売り先行をおすすめしているというわけです。
3.「売り先行」は新しい物件での融資が付きやすい!
新居を購入するときも住宅ローンを組んで購入するケースが多いでしょう。
その場合、売り先行は新居の住宅ローン審査に問題はないですが、買い先行の場合は審査ハードルが高くなります。
どうして買い先行の場合は審査のハードルが高くなるの…?
ひなペンギン
ペンギン先生
買い先行の場合は、ひとつの住宅ローンを完済していない状態で、新居用として2つ目の住宅ローンを借りることになるからだよ。
売り先行の場合、新居の住宅ローンを組む前に今住んでいる家の売却は終わっているということです。
つまり、今住んでいる家の住宅ローンはゼロになっているので、新居の住宅ローン審査にも影響しません。
一方、買い先行ということは今住んでいる家の住宅ローンが残っている状態で、新居の住宅ローン審査を行うということです。
この場合、基本的にはダブルで住宅ローンを組むことになります。
本来、住宅ローンは自宅用のローンなので2本同時に組むことはできませんが、今住んでいる家を「売却する」という前提であればダブルローンを組むことは可能です。
ただし、その場合は今の家のローンも「残債」として扱われます。
したがって、新居の住宅ローン審査のハードルはぐっと上がってしまうというデメリットがある買い先行より、住宅ローンがつきやすい売り先行がオススメになります。
4.「売り先行」は仮住まいになるリスクがある!
資金計画が立てやすく、住宅ローンが二重になることもない「売り先行」ですが、デメリットもあります。
それは、仮住まいになる可能性があることです。
仮住まいとは、売却した家の引渡しから新しい家の引渡しの間、一時的に賃貸物件などに住むことです。
売り先行の場合には、今住んでいる家を先に引渡ししてしまうので、自分の住む家がなくなります。
そのため、新居の引渡しを受けるまでの間、賃貸物件など別の家に移り住む必要があります。
仮に、売却する家の引渡しと新居の引渡しを同日にできれば仮住まいはないですが、そこまで都合よくスケジュールできるケースは少ないでしょう。
仮住まいがあると引越し費用がかかりますし、何より賃貸物件探しや引越しの「手間」がかかるのでデメリットといえます。
売却を先にする「売り先行」の方が売り急がずに高く売れるんだね。買い先行の場合は、立てにくい資金計画をしっかりすることがポイント…。
ひなペンギン
ペンギン先生
売り先行の場合は仮住まいになるリスクを、買い先行の場合は家が売れなかった場合の住宅ローンが二重にかかるリスクを考えておこう!
失敗しない住み替えをするために知っておくべき3つ
上述のように、売り先行・買い先行で比較すると「売り先行」の方がおすすめですが、どちらのケースにせよ、家の住み替え時は以下3点を理解しておきましょう。
- 新居では「住み替えローン」も検討してみる
- 売り先行の場合は仮住まいになったときの費用を計算する
- 買い先行の場合は「買い替え特約」を設定できるか確認する
1.新居では「住み替えローン」も検討してみる
次に、新居で住宅ローンを組むときは住み替えローンを検討してみましょう。
新居の購入で住み替えローンを利用すると、手持ち資金を捻出することなく住み替えることが可能です。
手持ちの資金は出したくないから、ゼッタイ使いたいよ!
ひなペンギン
ペンギン先生
住み替えローンが使えるのは、自宅を売ったお金で住宅ローン完済ができない人だけだよ。
住み替えローンの仕組み
住み替えローンとは、今住んでいる家を売却してローンが残ったとしても、その残ったローンと新居のローンを合算して組むことができるローンです。
仮に、家の残債が3,000万円で成約価格が2,800万円なら、差額の200万円を手持ち資金で捻出することになります。
しかし、住み替えローンを組むことで、その200万円と新居の住宅ローンを合算して組むことが可能なので、手持ち資金を捻出しなくて済むということです。
住み替えローンのメリット・デメリット
家の売却金額で住宅ローンが完済できないときは、住み替えローンのメリット・デメリットを確認して、検討してみましょう。
メリット | 売買時の諸費用もローンを組むことができるので、手持ち資金を減らさずに住み替えが可能。 |
---|---|
デメリット | 借入額が大きくなるので、ローンの審査が厳しくなり、返済額も大きくなる |
住み替えローンを組む場合は、返済額を加味した上で資金計画を精査しましょう。
2.売り先行の場合は仮住まいになったときの費用を計算する
売却を優先した結果、仮住まいになる場合は、必ず仮住まいになることで発生する費用を計算しましょう。
一般的に仮住まいは賃貸物件を探しますので、以下の費用がかかってきます。
- 引越し費用
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
敷金・礼金・仲介手数料は物件によって異なりますが、一般的な物件はそれぞれ家賃の1か月分の費用がかかります。
さらに、家賃も前払いとして1~2か月分を先払いするので、賃貸する物件の家賃半年分くらいの費用がかかるとい思っておきましょう。
上述のように売り先行は住居費がダブルでかかることはありませんが、このような初期費用が大きくなる点は認識しておく必要があります。
3.買い先行の場合「買い替え特約」を設定できるか確認する
購入資金がなく買い先行をする場合には、買い替え特約を設定できるかどうかを確認しましょう。
仮に買い替え特約ができる物件であれば、買い先行の「住居費がダブルでかかる」というリスクはなくなります。
ただ、結論からいうと売主にはデメリットが多く、買い替え特約を設定することはなかなかできません。
か、買い替え特約?
ひなペンギン
ペンギン先生
簡単にいうと「〇月×日までに自宅が売れていない場合、購入を決めた家の契約白紙にする」という内容だよ。
買い替え特約とは?
買い替え特約とは新居の売買契約を結ぶときの特約で、「〇月〇日までに▲▲(今住んでいる家)が××万円以上で売れなければ、売買契約は白紙解約とする」という内容です。
本来、売主・買主からの一方的な売買契約の解除は、手付金を違約金として支払う必要があります。
つまり、買主側から売買契約を解除する場合は、売買契約時に預けている手付金は没収されるということです。
しかし、この買い替え特約を設定することができれば、今住んでいる家の売却が上手くいかなかったとしても、手付金は返還される白紙解約となります。
そのため、新居の売買契約は解除となりますが、住居費がダブルでかかることはなくなります。
新しい家に入居するとき前の自宅が売れていない、というリスクを防げるんだ…!買い替え特約を設定したいなあ。
ひなペンギン
ペンギン先生
売主にはメリットが多いけど、買主は逆に契約白紙にされる不安があるから、なかなか設定できるものでもないんだ。
売主が嫌がる買い替え特約は成立しにくい
上述のように、中古物件で買い替え特約はほぼ設定できません。
その理由は売主のリスクが大きいからです。
売主からすれば買い替え特約を設定した上で売買契約を結ぶとなると、売買契約が白紙解約になるリスクが常につきまといます。
そのため、主に個人が売主である中古物件で買い替え特約を設定するときは、リスクを嫌がるのでよほど売却に困っている物件くらいしか設定ないでしょう。
どうしても買い替え特約を設定したい場合はどうすればいい?
ひなペンギン
ペンギン先生
買い替え特約を受け入れてくれやすい売主を探すことになるかな。売却に困っている売主か、売主が不動産業者の場合は買い替え特約も契約しやすくなるよ。
新築物件の場合で一度にたくさんの戸数(棟数)を売却するときには、売主がディベロッパーということもあり買い替え特約を設定できる物件もあります。
ただ、新築でも人気物件や残り戸数(棟数)が少なくなっている物件は、買い替え特約を設定するリスクを嫌がり、中古物件と同じく設定不可能な物件が多いです。
住み替えによる家の売却で役立つ情報
最後に、住み替えによる売却で役立つ以下の情報について解説します。
- 確実に売却できる「買取保証」
- 節税できる「買い換え特例」
確実に売却できる「買取保証」
【用語解説】買取保証とは
買取保証とは、決められた期限までに売却できなければ、不動産会社が買い取るという制度のこと。
たとえば、買い先行で新しい家を購入して、その引渡しが3か月後だったとします。
その場合、3か月後に今の家の引渡しが完了していないと、入居費がダブルでかかるということです。
それを避けるために、たとえば「2か月後に売買契約が締結できていなければA社が2,300万円で買い取る」と決めておきます。
これが買取保証です。
つまり、買取保証をつけることで、売却が長引き入居費がダブルでかかることがなくなるというわけです。
ただ、そもそも買取保証を付けられる不動産会社は限定される点、買取保証を付けるときは「専属専任媒介契約を締結する」「査定価格が○○万円以上」など条件があるケースが多いという点は覚えておきましょう。
節税できる「買い換え特例」
不動産の売却時には、売却益に税金がかかってきます。
しかし、買い換え特例を利用することで、その税金を繰り延べすることが可能です。
たとえば、今回の買い替えにより譲渡所得(≒売却益)が1,000万円出て、その所得に税金がかかるとします。
買い換え特例を利用することで、この1,000万円を次に物件を売却するときまでに繰り延べできます。
つまり、次に物件を売却するときに譲渡損失が1,000万円出れば、この譲渡所得1,000万円と合算され税金はゼロになるということです。
ただし、譲渡所得がゼロになるわけではなく、あくまで繰り延べられるだけなので、次の物件売却時の譲渡所得によっては税金が発生する点は認識しておきましょう。
まとめ
それでは、今回解説した「住み替えが伴う家の売却」について、覚えておくべきことをおさらいしましょう。
記事のおさらい
- 基本的には住居費がダブルでかからない「売り先行」が良い
- 買い先行の場合は「買い替え特約」を設定できるか確認する
- 売り先行の場合は仮住まいにかかる費用を計算しておく
住み替えが伴う家の売却は手間がかかりますし、場合によっては金銭的な負担が大きくなります。
そのため、上述した注意点をきちんと理解してから、売却・購入をはじめなければいけません。
基本的には売り先行の方が良いですが、買い先行にする場合は余裕を持った資金計画が必須です。
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コンサルタント
宅地建物取引士
新卒で不動産ディベロッパーに勤務し、用地仕入れ・営業・仲介など、不動産事業全般を経験。入居用不動産にも投資用不動産にも知見は明るい。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。趣味は読書。好きな作家は村上春樹、石原慎太郎。