マンション売却時は火災保険を解約!タイミングと保険料を取り戻す方法を解説

2018.11.19投稿 マンション売却で高く売るための本当に必要な5つのポイントを紹介
執筆者の竹内英二さんの写真

不動産鑑定士

竹内英二

火災保険料やローン保証料、税金等、マンションを売却すると戻ってくるお金がいくつかあります。

マンション売却は大きなお金が動くため、火災保険料などの数万円程度のお金は見落としがちです。

火災保険の取戻しはマンション売却後の不動産会社の手を離れた後に行うため、売主のお客様をサポートしにくい部分でもあります。

そこで今回は、不動産会社を経営している筆者が代表して火災保険の取戻し(返戻金)についてお伝えいたします。

この記事ではこんな悩みを解決します!

  • マンション売却すると火災保険って戻ってくるの?
  • マンション売却で火災保険を取り戻すにはどうしたら良いの?
  • どんな火災保険でもマンションを売却すると戻ってくるの?
  • いくらくらいの保険料が戻ってくるの?

この記事では上記のような悩みをお持ちの人に向けて、マンション売却時の火災保険の解約について、誰にでも分かるように順を追って説明していきます。

どんな契約の保険がいくらくらいもどってくるのかについても、包み隠さず解説します。

この記事を最後まで読めば、不動産会社のサポートなしでも火災保険料を取り戻せるようになります。

それではマンション売却における火災保険について解説していきましょう。

火災保険解約のタイミングは「引渡し後」

火災保険は、必ず引渡しの後に解約するようにして下さい。

マンションの売却は「売買契約」と「引渡し」のタイミングが異なり、その間、1ヶ月ほどの期間が空きます。売買契約が成立しても、それで安心して火災保険を解約してしまってはいけません。

マンションをはじめとする不動産の売買では、「危険負担(きけんふたん)」という考え方があります。

【用語解説】危険負担

危険負担とは、売買契約締結後、引渡し前にマンションが火災・地震・台風などにより損害を受け、両当事者に責任がない場合、その損害に対して売主または買主のどちらがその損害を負担するのかという問題です。

「危険」は「リスク」という言葉に置き換えた方が分かりやすいかもしれません。

民法では、不動産のような特定物の売買に関しては買主負担を原則としています(民法第534条)。しかし、取引上の慣行としては、“特約”により民法の規定とは逆の売主負担としています。

通常、売買契約が成立すると、買主には代金支払い義務が発生します。

しかしながら、引渡しの前にマンションが火災で損害を受けた場合には、「買主は代金支払い義務を免除され、物件も買わなくて良いですよ」というのが売主の危険負担の意味です。

つまり、もし引渡しまでの間に火災が起きてしまった場合、売主は買主に対して「それでも買ってください」と主張することはできません。引渡し前に火災保険を解約してしまうと、火災時に売主は何の後ろ盾もないことになります。

マンションの売却は、引渡しが終わるまで何が起こるか分かりません。当然、火災もあるかもしれませんので、火災保険は引渡しをしたあとに解約するようにして下さい。

コラム:民法改正の最新動向

危険負担に関しては、現行の民法から廃止される方向です。

新しい民法では、両当事者に責任がない事由によって物件の引渡ができなくなったときは、買主は売買代金の支払いを拒むことができるようになります。

つまり、結果的には引き続き今の不動産取引の危険負担と同じ対応になります。

民法改正は2020年4月1日と予想されていますが、改正後も同様に火災保険は引渡後に解約すべきものとなります。

ここまで火災保険解約のタイミングについて見てきました。
火災保険の解約のタイミングは引渡し後であることが分かりましたね。

「取り戻せる火災保険」と「取り戻せない火災保険」の違い

この章では、取り戻せる火災保険と取り戻せない火災保険の違いについてくわしく説明していきます。

火災保険はすべての契約で保険料が戻ってくるわけではありません。

保険料を取り戻せるのは、

という状態の火災保険です。

売却時にちょうど残存期間がなければ、火災保険は戻ってきません。

火災保険は長期で契約すると、保険料を安くすることができます。そのため、長期で契約している人が多いです。

火災保険は最長10年の長期契約をすることが可能です。2~10年の間で長期契約をおこなう場合、年数に応じて、単年の保険料に長期係数と呼ばれる係数を乗じたものが保険料となります。

長期係数は保険会社によって異なりますが、目安としては以下のような数値が採用されます。

保険期間 長期係数
2年 1.85
3年 2.70
4年 3.50
5年 4.30
6年 5.10
7年 5.90
8年 6.70
9年 7.45
10年 8.20

例えば、上表では10年の長期係数となっています。

1年間の保険料が1万円だった場合、毎年10年間払うと10万円となります。しかし、10年分を一括で払うと8.2万円(1万円×8.20)ということになります。

火災保険は長期一括契約で契約すると安くなるため、長期で契約している人が多いです。

10年契約の人が、8年目にマンションを売却したら、残り2年分が戻ってくるという仕組みです。たまたま10年目ピッタリで売却した場合は、保険料は戻ってきません。

マンションで火災保険が戻ってくる人は、「長期一括で契約している」かつ「残存期間がある」という2つの条件が整っている人です。

ここまで取り戻せる火災保険と取り戻せない火災保険の違いについて説明しました。火災保険は長期一括で契約残存期間が残っている場合、返戻金が取り戻せます。

注意!自ら解約手続きをしないと保険料は戻ってこない

この章では、火災保険を取り戻す方法について詳しく説明していきます。

火災保険はマンションを売却しても自動で戻ってくるものではありません。自ら解約手続きを行わない限り戻ってこないという点に注意しましょう。

マンションの売却では、銀行のローン保証料も戻ってきます。ローン保証料も火災保険と同様に、残存期間が残っていると残りの期間分の保証料が戻ります。

ローン保証料は住宅ローンの抹消手続きをする際、何も言わなくても銀行が計算して返してくれます。そのため、ローン保証料については、忘れていても取り戻すことが可能です。

一方で、火災保険に関しては、保険会社はあなたがマンションを売却したことを知るタイミングがありません。そのため、自ら保険会社に解約手続きをしない限り、保険会社が返戻金を戻してくれないのです。

火災保険の解約は、契約の代理店等に連絡をすればかんたんに手続きできます。通常、連絡先は保険証券に記載がありますので、まずは保険証券の有無を確認するようにして下さい。

電話で解約の連絡をすると、代理店等から解約の書類が送られてきます。その書面に、署名と捺印をし、返送すれば解約の手続きは完了です。

解約の連絡が遅れても何もペナルティはありませんが、戻ってくるお金が少なくなります。引渡し後、すみやかに連絡するようにしましょう。

ここまで火災保険を取り戻す方法について説明してきました。火災保険は自ら解約手続きをしないと取り戻せないことが分かりましたね。

返戻金の計算で必要な未経過料率係数表とは

この章では、未経過料率係数について説明していきます。

未経過料率とは、長期一括払契約を解約したり契約内容の変更をする際に、解約返戻金の計算で用いるための係数です。

難しそうと感じると思いますが、この章では「こんな係数表がある」ということが分かれば大丈夫です。

参考までに、一例として10年契約の未経過料率を示します。火災保険の未経過料率は保険会社や契約年度によっても異なりますが、だいたい似たような数字になります。

経過月数 経過年数
0年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年
1ヶ月まで 97% 88% 79% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10%
2ヶ月まで 96% 88% 78% 69% 59% 49% 39% 29% 19% 9%
3ヶ月まで 95% 87% 77% 68% 58% 49% 39% 29% 18% 8%
4ヶ月まで 94% 86% 77% 67% 58% 48% 38% 28% 17% 7%
5ヶ月まで 93% 85% 76% 66% 57% 47% 37% 27% 17% 6%
6ヶ月まで 92% 84% 75% 66% 56% 46% 36% 26% 16% 5%
7ヶ月まで 92% 84% 74% 65% 55% 45% 35% 25% 15% 4%
8ヶ月まで 91% 83% 74% 64% 54% 44% 34% 24% 14% 4%
9ヶ月まで 91% 82% 73% 63% 53% 44% 34% 23% 13% 3%
10ヶ月まで 90% 81% 72% 62% 53% 43% 33% 23% 12% 2%
11ヶ月まで 90% 81% 71% 62% 52% 42% 32% 22% 11% 1%
12ヶ月まで 89% 80% 70% 61% 51% 41% 31% 21% 11% 0%

ここまで未経過料率について説明してきました。

では、未経過料率とはどのように利用するのでしょうか。

戻ってくる金額の計算例

この章では、未経過料率を使い、実際に戻ってくる火災保険の金額の計算方法についてご紹介します。

戻ってくる火災保険の金額は、以下の式で計算されます。

返戻金=長期一括保険料×未経過料率

ここで、以下のような条件で返戻金を具体的に計算してみます。

条件(一例)

年間保険料:1万円
契約期間:10年
長期係数:8.2
売却時期:4年8ヶ月目で売却

返戻金の計算例

長期一括保険料=年間保険料×長期係数
       =1万円×8.2
       =8.2万円

未経過料率:54% (前章の未経過料率表より)

返戻金=長期一括保険料×未経過料率
   = 8.2万円×54%
   = 4万4,280円

火災保険料は元々がそんなに大きな金額ではないため、戻ってくるお金は「数万円」程度です。

ここまで戻ってくる金額の計算例について説明してきました。

「返戻金は、支払った保険料に未経過料率を乗じたものとなる」ということが分かりましたね。

火災保険のオプション次第では修繕も可能

この章では、火災保険の解約以外の選択肢についても触れておきます。

マンションを売却する際、火災保険は解約するだけが全てではありません。火災保険を使ってマンションの修繕ができる場合がありますので、その方法についてご紹介します。

火災保険では、火災以外にオプションで以下のような災害についても保険の対象とすることができます。

  1. 火災・落電・破裂・爆発
  2. 風災・ひょう災・雪災
  3. 水災
  4. 水ぬれ
  5. 物体の落下・飛来・衝突
  6. 騒じょう・集団行動などによる破壊
  7. 盗難・盗難による破損・汚損
  8. 偶発的な事故による破損・汚損

上記のような火災以外の損害は、火災保険加入時にオプションで選択しています。特にマンションをお持ちの人は、「水ぬれ」は加入時にオプションで加入している人も多いはずです。

水ぬれとは、給排水設備に発生した事故などによる水ぬれの損害です。

例えば、「給排水管が壊れて室内や家財が水浸しになった」、「上階からの水ぬれで天井や床の張り替えが必要になった」などの損害が水ぬれに該当します。

火災保険は数年前に加入しているため、選択したオプションを忘れてしまっている人や、火災しか保険の対象にならないと思い込んでいる人も多いです。結果、水ぬれ被害にあっても、そのまま放置してしまっている人もいます。

もし、室内に水ぬれ被害が残っている場合は、売却の前に保険で修繕してしまうことをおすすめします。

水ぬれの痕跡が残っているままだとマンション価格の値引き対象となる可能性があります。マンションの値引きは数十万円から百万円のオーダーで行われますので、火災保険の返戻金をもらうよりは、保険を使って修繕を行い、値引きを防止した方がお得です。

マンション売却による火災保険の返戻金は、金額的にはたいしたことがありません。それよりも、必要となる修繕費や値引きの方がはるかに金額が大きくなってしまいます。

売却前には、火災保険のオプションを再確認し、修繕に使えるものがないかどうかを確認しておきましょう。

ここまで火災保険の解約以外の選択肢について説明してきました。火災保険はオプション次第で修繕もできるということが分かりましたね。

地震保険もかけている場合の対応方法

この章では、地震保険もかけている場合の対応方法についてご紹介します。

火災保険をかけている人の中には、地震保険もかけている人もいると思います。

地震保険は、建物の火災保険と必ずセットでないと加入できません。そのため、主契約である火災保険が解約されれば、従たる契約の地震保険も解約することになります。

地震保険も長期契約をしていれば、残存期間分の保険料が戻ってくることになります。

地震保険も長期一括契約をすると、保険料が安くなります。

地震保険の長期係数は以下の通りです。

地震保険期間 長期係数
2年 1.90
3年 2.75
4年 3.60
5年 4.45

ただし、長期一括契約は地震保険が最長10年であるのに対し、地震保険は最長5年までしか契約することができません。火災保険と地震保険をどちらも長期契約したとしても、それぞれの残存期間が異なる場合があります。

例えば、火災保険を10年、地震保険を5年で長期一括の契約をした場合、4年目に売却したら、火災保険の残存期間は6年ですが、地震保険の残存期間は1年しかないことになります。

このように、火災保険と地震保険では、残存期間が異なることもあるため、解約時にはご注意ください。

また、地震保険にも同様に未経過料率が存在します。未経過料率の使用方法も火災保険と同じです。

損害保険料算出機構が提示している地震保険の未経過料率は、以下のとおりです。

経過月数 経過年数
2年契約 3年契約 4年契約 5年契約
0年 1年 0年 1年 2年 0年 1年 2年 3年 0年 1年 2年 3年 4年
1か月まで 91% 44% 94% 62% 30% 96% 71% 47% 23% 96% 77% 58% 38% 18%
2か月まで 87% 40% 92% 59% 27% 94% 69% 45% 21% 95% 75% 56% 36% 17%
3か月まで 84% 36% 89% 57% 24% 92% 67% 43% 18% 93% 74% 54% 35% 15%
4か月まで 80% 32% 86% 54% 22% 90% 65% 41% 16% 92% 72% 53% 33% 13%
5か月まで 76% 28% 84% 51% 19% 88% 63% 39% 14% 90% 71% 51% 31% 12%
6か月まで 72% 24% 81% 49% 16% 86% 61% 37% 12% 88% 69% 49% 30% 10%
7か月まで 68% 20% 78% 46% 14% 84% 59% 35% 10% 87% 67% 48% 28% 8%
8か月まで 64% 16% 75% 43% 11% 82% 57% 33% 8% 85% 66% 46% 26% 7%
9か月まで 60% 12% 73% 41% 8% 79% 55% 31% 6% 84% 64% 44% 25% 5%
10か月まで 56% 8% 70% 38% 5% 77% 53% 29% 4% 82% 62% 43% 23% 3%
11か月まで 52% 4% 67% 35% 3% 75% 51% 27% 2% 80% 61% 41% 21% 2%
12か月まで 48% 0% 65% 32% 0% 73% 49% 25% 0% 79% 59% 40% 20% 0%

※引用:地震保険基準料率表 2017年6月届出(損害保険料算出機構)

なお、火災保険を解約すると、地震保険も自動的にセットで解約されます。念のため、火災保険解約時には地震保険の返戻金も戻ってきているか確認するようにして下さい。

それぞれ何年で契約したのか確認しておくと、返戻金の確認もスムーズです。

まとめ

マンション売却で火災保険を取り戻す方法についてポイントをおさらいしましょう。

記事のおさらい

  • 火災保険は引渡し後に解約するようにして下さい。
  • 火災保険は長期一括契約で残存期間が残っている場合、返戻金が取り戻せます。
  • 火災保険は自ら解約手続きを取らないと戻ってきません。
  • 返戻金は支払った保険料に未経過料率を乗じたものになります。
  • 水ぬれ被害はオプションがついていれば修繕できる場合もあります。
  • 地震保険も加入している場合には地震保険も自動的に解約となります。

マンション売却では、火災保険の解約返戻金を取り戻すことを忘れがちです。誰もアドバイスしてくれないため、ご注意ください。

マンションを売却した後は、忘れずに自分で解約手続きを行うようにしましょう。

執筆者の竹内英二さんの写真

不動産鑑定士

竹内英二

保有資格:不動産鑑定士、中小企業診断士、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、相続対策専門士、不動産キャリアパーソン

大阪大学大学院卒。不動産鑑定士合格後は、日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定やオフィスビル・賃貸マンション等の開発業務に11年間従事。2015年に株式会社グロープロフィット(不動産鑑定業・宅地建物取引業)を設立し代表取締役を務める。趣味は水泳。好きな漫画は「進撃の巨人」。