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元仲介担当者が教える!マンション売却のキャンセル方法と金銭リスク

2019.05.22投稿 マンション売却のキャンセル方法と金銭リスク
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コンサルタント

監修 中村昌弘

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マンションは高額な商品なので、売り出してから買主を見つけて売買契約を結ぶまで時間がかかります。

売主の立場からすると時間をかけて売買契約を結んだので、当然ながら契約のキャンセルは避けたいですよね。しかし、売買契約をキャンセルされてしまうことは実際にあります。

また、売主の意志で契約をキャンセルすることもあるでしょう。

ただ、これらのキャンセルに伴い、売主は金銭的なデメリットを受けてしまうこともあるので、この記事では以下の点を解説していきます。

この記事ではこんな悩みを解決します!

  • マンション売却におけるキャンセルってどういうもの?
  • 売買契約のキャンセルリスクは?
  • 媒介契約をキャンセルすると費用負担はある?

筆者は、元々マンションディベロッパーの営業マンであり、今まで数多くの不動産を仲介してきました。

実際に売買契約がキャンセルになった場面も経験していますし、残念ながら媒介契約がキャンセルになってしまったこともあります。

今回の記事は、そんな実体験を踏まえた上で解説していきます。

マンション売却のキャンセルには2種類ある

マンション売却時で知っておくべき「キャンセル」は、以下2種類のキャンセルについてです。

  • 売買契約のキャンセル
  • 媒介契約のキャンセル

売買契約とは、買主と結ぶマンションの売買契約のことです。一方、媒介契約とは不動産会社と結ぶ「マンションの売却を正式に依頼」するための契約になります。

ここで覚えておくべきことは、

  • 「申込キャンセル」は買主にも売主にもリスクがない
  • 注意すべきなのは「売買契約」「媒介契約」のキャンセルである

ということです。

一般的に、マンション売却は買主から申込を受けた後に売買契約を結びます。

その「申込」に関しては、売主・買主が一方的にキャンセルをしてもペナルティはありません。これは売主の立場からすると、申込のタイミングで売却相手を慎重に検討する必要があるということです。

買主との売買契約をキャンセルする方法とリスク

まずは、売買契約をキャンセルする方法とリスクを解説していきます。

ここでポイントとなるのは、「申込~契約までに買主から預かる手付金」と「売買時に結ぶ特約の内容」です。

手付金は違約金になる

申込~契約までに預かる手付金は、そのまま買主・売主が一方的に売買契約をキャンセルしたときの違約金となります。

手付金とは、売買金額の20%を上限に設定するお金で、買主から預かり売買代金に充当されます。たとえば、2,000万円で売買契約を結んだ場合、手付金の上限は400万円です。

一般的には5%~10%前後で設定する場合が多く、仮に100万円を手付金に設定したとしましょう。この場合、売主と買主のどちらかが一方的に売買契約をキャンセルした場合は、その100万円が違約金となります。

買主が売買契約をキャンセルした場合は、支払った手付金は没収つまり買主の手元に戻ってきません。売主視点で言うと、キャンセルされた代わりに、手付金として受けとっていた100万円が手元に残ります。

売主が売買契約をキャンセルした場合は、売主は先に受け取っていた手付金を買主に返還し、さらに同額の100万円を買主に違約金として支払うことになります。

買主がキャンセルする事例

そもそも売主は「マンションを売却したい」立場なので、売主から売買契約をキャンセルする事例はごく稀です。一方、買主が売買契約を結んだ後にキャンセルするケースは少ないながらもあります。

買主が手付金を放棄してまで売買契約をキャンセルするのは、たとえば以下のようなケースです。

  • ほかに良い物件が見つかった
  • 購入ではなく賃貸にすることにした
  • よく考えたら気に入らない点が多かった

もっとも多いのは「ほかに良い物件が見つかった」というケースです。

仮に、買主が手付金100万円を支払ってAマンションの契約をしたあとに、ほかのBマンションが気になったとします。

そのBマンションの仲介営業担当から「今契約を結んでいるAマンションをキャンセルしてくれれば100万円値引きしますよ」と言われれば、Bマンションはプラスマイナスゼロで契約できます。

また、そのように交渉する仲介マンは少なくないので、「ほかに良い物件が見つかった」といってキャンセルするケースがあるのです。

売主ではなく買主からのキャンセルが多いことを考えると、売主の立場からは手付金額は高めに設定した方がキャンセル防止につながります

最低でも売買金額の5%、できれば10%以上の手付金を取るよう、事前に不動産会社に伝えておくことをおすすめします。

売買契約キャンセルに関わる「ローン特約」がある場合の取り扱い

次に、「ローン特約」と「買い替え特約」という、売買契約に設定されている特約について解説します。

まずは、ローン特約についてです。

ローン特約とは?

ローン特約とは、「住宅ローンの本審査が否決になれば白紙解約をする」というもので、買主のリスクを小さくする特約です。一般的に、マンションの売買契約書に記載されています。

マンションなどの不動産を購入するときは、以下のような流れで進みます。

  1. 住宅ローンの仮審査
  2. 仮審査の承認
  3. 売買契約の締結
  4. 住宅ローンの本申込
  5. 本申込の承認
  6. 住宅ローン実行(決済&引渡し)

住宅ローンの仮審査に承認されてから状況が変わっていなければ、本審査もそのまま承認になります。

しかし、買主に非がなく本審査が否決になった場合、マンションを購入できなくなります。売買契約のキャンセル(違約)となり、売主に渡した手付金が没収されてしまいます。それでは買主の損失が大きくなってしまいます。

ローン特約をつけていれば、住宅ローンの本審査が否決になった場合に「手付金を返還する白紙解約」とすることができ、買主の損失を抑えることができます。

仮審査は支店レベルの決済であるケースが多く、本審査では本店での決済になります。そのため、稀に仮審査承認でも本審査否決になることはあります。

とはいえ、それは買主にはどうしようもないことなので、ローン特約を売買契約書に盛り込むことで、買主のリスクを小さくしているのがローン特約の背景になります。

ローン特約が適用されないケース

ただし、買主に非がある場合にはローン特約が適用されずに違約になります。

そのようなケースとは以下のとおりです。

  • 新たな借入をした
  • 勝手に転職をした
  • 既存の借入で延滞をした

要は、仮審査時と状況が変わり、それが買主の責任によるものであるときです。仮に、転職をすることで年収が2倍に上がるとしても、本審査では否決になるでしょう。

それは、金融機関が年収だけでなく、会社規模や雇用形態、勤続年数などを、総合的に判断しているからです。

売買契約キャンセルに関わる「買い替え特約」がある場合の取り扱い

次に、もう1つの特約である「買い替え特約」について解説します。

買い替え特約は、買主が買い替えに伴い追記する特約です。もともとの売買契約書に記載されているわけではありません。

買主が現在売却している自宅を「○○年▲月◇日までに、××万円で売れなければ売買契約は白紙解約にする」という内容です。

仮に、特約で定めた期限・売却金額で売却が完了しなければ、手付金は返還しての白紙解約になります。

このように、買い替え時の買主を保護するための特約のため、設定するかどうかは売主の自由です。

買い替え特約は売買契約キャンセルリスクが高まるので、一般的には相当売れ行きが悪い物件でない限り設定しないでしょう。

売買契約のキャンセルで仲介手数料を請求されるケース

また、媒介契約を結んだ不動産会社は、宅建業法で「不動産会社は売買契約成立時に仲介手数料を請求できる」と定められています。

しかし、売買契約成立後に売買契約がキャンセルになった場合、仲介手数料はどうなるのでしょうか?

結論から言うと、特約を結んでいれば仲介手数料は発生せずに、結んでいなければ仲介手数料は発生します。

上述したローン特約と買い替え特約は「白紙解約」になるので、契約自体がなかったことになるため仲介手数料もかからないということです。

しかし、通常の売買契約キャンセルであれば、契約自体は成立しているので、宅建業法で定められている「不動産会社は売買契約成立時に仲介手数料を請求できる」に該当します。

とはいえ、一般的には仲介手数料の支払いを売買契約時に半金、決済時に半金と定めるので、半金だけの支払いになるケースが多いでしょう。

また、売買契約キャンセルは買主からのキャンセルが大半なので、その場合に売主は買主の手付金を没収しています。

そのため、その手付金から仲介手数料の半金を賄えるケースが大半です。

不動産会社との媒介契約をキャンセルする方法とリスク

次に、不動産会社と結ぶ媒介契約をキャンセルするときについて解説します。

媒介契約のキャンセルは、媒介契約の種類によっては違約金が発生するので注意しましょう。

媒介契約はキャンセル可能

媒介契約には以下3種類があり、いずれも締結後のキャンセルは可能です。

  • 一般媒介契約
  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約

しかし、一般媒介契約は媒介契約をキャンセルしても問題ありませんが、専属専任媒介契約と専任媒介契約(以降、専任系媒介契約)は違約金が発生することがあるので要注意です。

違約金に関して知っておくべきこと

専任系媒介契約の違約金に関しては、以下の点を確認しておきましょう。

  • 違約金の項目
  • 違約金が発生する場合は明細書を請求する

要は、不動産会社から不当に金銭を請求されないようにしなければいけません。

ただし、実際には媒介契約をキャンセルして、不動産会社が違約金を請求するケースは多くはないでしょう。

というのも、媒介契約をキャンセルするということは、売主は不動産会社に不満があるということです。

その状況で不動産会社が違約金を請求すると売主と揉める可能性が高くなります。

違約金はせいぜい10~20万円程度になるので、その金額であれば不動産会社は売主と揉める労力の方が大変だと考えるのです。

違約金の項目とは?

さて、不動産会社は媒介契約キャンセルの違約として、以下の項目を請求することができます。

  • チラシ作成や印刷代
  • ポスティング代
  • ネット掲載費用

このように、不動産会社は媒介契約をキャンセルするときまでに発生した広告費の請求が可能です。

不動産会社からすれば、そのマンション売却のためにお金をかけて広告をしていたので、その費用は請求しても良いということです。

違約金が発生する場合は明細書を請求する

上述のように違約金を請求されるケースは多くないですが、それでも不動産会社に違約金として前項の費用を請求されたら明細書を請求しましょう。

そうすれば、請求金額の内訳を示してくれるので、正当な金額かどうかの判断ができます。

仮に明細書に疑問がある場合は、各都道府県にある、都市整備局や土木部などの不動産業者を監督する部署に相談しましょう。

自分だけでは適正かどうか分からない場合もあると思うので、相談すれば第三者が判断してくれます。

トラブルなく媒介契約をキャンセルするなら期間満了時

仮に、トラブルを避けて媒介契約をキャンセルしたければ、媒介契約の期間満了を待つことです。専任系媒介契約の期間は最大で3ヵ月なので、通常は3ヵ月で媒介契約の期限を設定しています。

一般媒介契約は期限の定めはありませんが、専任系媒介契約に習って3ヵ月を期限にしている場合が大半です。

その期限満了時であれば媒介契約をキャンセルするのは問題なく、前項の広告費などの請求もありません。

ただし、その場合は期間満了時にスムーズに次の不動産会社と媒介契約を結ばないと、マンションを売却していない期間ができてしまい売却スピードが落ちてしまいます。

そのため、期間満了を迎える前に再度査定依頼をして、次に媒介契約を結ぶ不動産会社をピックアップしておきましょう。

キャンセル可否と発生する支払い料金の有無まとめ

では、ここまで解説した売買契約と媒介契約のキャンセルについて、金銭の支払い有無を含め以下にまとめます。

売買契約キャンセル時の金銭支払い
項目 特約なし ローン特約あり 買い替え特約あり
手付金 没収できる 返還して白紙解約
仲介手数料 支払い義務あり(実際は半金が多い) 支払い義務なし
媒介契約キャンセル時の金銭支払い
項目 一般媒介 専属専任媒介契約 専任媒介契約
契約の解除 自由にできる 原則は期限満了までできない
違約金 なし 広告費などは請求される可能性あり
仲介手数料 支払い義務なし

まとめ

それでは、今回解説した「マンション売却のキャンセル」について、覚えておくべきことをおさらいしましょう。

記事のおさらい

  • マンション売却のキャンセルは「売買契約」「媒介契約」の2種類
  • 売買契約のキャンセル時は手付金が違約金になる
  • ローン特約と買い替え特約に該当すれば白紙解約
  • 媒介契約のキャンセルは種類によって違約金の有無は異なる

特に売買契約のキャンセルについては気を付けなければいけません。

手付金を少額にするとキャンセルリスクが上がりますし、買い替え特約などを設定してもキャンセルリスクは上がります。

また、媒介契約のキャンセル時にも費用発生するリスクがありますので、そもそも媒介契約をキャンセルする必要がない「信頼できる不動産会社選び」が重要です。

マンション売却時はその点も踏まえ、手付金の設定、および不動産会社の選定を行いましょう。

監修の中村昌弘さんの写真

コンサルタント

監修 中村昌弘

宅地建物取引士

新卒で不動産ディベロッパーに勤務し、用地仕入れ・営業・仲介など、不動産事業全般を経験。入居用不動産にも投資用不動産にも知見は明るい。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。趣味は読書。好きな作家は村上春樹、石原慎太郎。

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