不動産売却後は健康保険料が上がる?不動産売却と保険料の関係を徹底解説!

不動産売却をするとなぜ健康保険料が上がるのか

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不動産ライター兼不動産経営者 監修 中村裕介 宅地建物取引士、保育士

不動産売却をしたあと、健康保険料が上がるという話があります。一体、どのような仕組みでそうなるのでしょうか?

この記事では以下のような疑問や質問に答えます。

この記事ではこんな悩みを解決します!

  • 不動産売却と健康保険料ってどんな関係があるの?
  • 不動産売却の特別控除って何?
  • 不動産売却で健康保険料を安くする方法ってあるの?

この記事では、不動産売却をした場合のサラリーマンや公務員、自営業などの業種別の健康保険料の影響や、国民健康保険料の計算方法を解説します。

さらに、利用できる特別控除、後期高齢者や被扶養者が不動産売却した場合のケースなどについても紹介します。

この記事を読めば、不動産売却と健康保険料の関係についてバッチリ理解することができます。

不動産売却したら健康保険料が上がる可能性がある

結論からいえば、不動産売却したら健康保険料が上がる可能性はあります。

ただし、自分が加入している健康保険の種類によって影響を受けるものと受けないものがあります。

それぞれの健康保険のケースについて確認していきましょう。

サラリーマンなどの健康保険(協会けんぽ、組合健保)の場合

サラリーマンなどの社会保険の場合は、不動産売却をして売却益が出たとしても、健康保険料が上がることはありません。

会社員が加入する健康保険は、

  • 中小企業の従業員が多く加入する「協会けんぽ」
  • 大手の企業に多い「組合健保」

の2種類がありますが、どちらも健康保険料の算出方法は同じです。

健康保険は、会社の給料をもとにした「標準報酬月額」という指標を使って保険料が決定されます。

不動産を売却して得た利益は一時的な副収入であり、給料ではないので、健康保険料には影響しません。

公務員などの共済組合保険の場合

公務員や社会福祉法人などの団体職員といった人が加入する共済組合保険の場合も、不動産売却をして売却益が出たとしても健康保険料が上がることはありません。

共済組合保険もサラリーマンの健康保険と同様に標準報酬月額を指標として、毎月の給料から保険料が決定される仕組みになっているからです。

よって会社員、公務員や団体職員の人は、不動産を売却したとしても、健康保険料には影響はありません。

自営業などの国民健康保険の場合は注意が必要

自営業などの人や無職の人が加入している国民健康保険の場合は、不動産売却によって健康保険料が上がる可能性があります。

自営業などの人や無職の人には、給料のような保険料の算定基準となるものがありません。そのため、国民健康保険では、各世帯ごとのの総収入をベースとした「所得」を保険料の算定基準にしています。

所得には10種類あり、様々な所得を合算して課税する「総合課税」と、他の所得とは分けて課税する「分離課税」の2つのカテゴリーがあります。譲渡所得は分離課税というカテゴリーになり、税制上は他の所得と分けて課税されます。

しかし、これらの総合課税や分離課税といった考え方は、すべて税金の計算の話です。国民健康保険では、所得の種類など関係なく、全てひっくるめて「その世帯の所得」と判断されます。

よって国民健康保険の場合は、不動産売却という一時的な所得も、その世帯の所得として計算するため、翌年の保険料が上がってしまうのです。

国民健康保険料はどうやって決まる?

それでは、国民健康保険料が具体的にどのように計算されるのかを見ていきましょう。

国民健康保険料の計算方法

国民健康保険料の計算方法は、実はそれぞれの市区町村で異なります。

国民健康保険料は

  1. 医療分
  2. 後期高齢者支援金分
  3. 介護保険分

の3つを足し合わせて計算します。③の介護保険分は、40~64歳の人が負担します。

不動産の売却で譲渡所得があった場合に関係してくるのは、①医療分です。

①の医療分については、所得割、均等割、資産割、平等割を組み合わせて計算されます。それぞれの計算にある税率、税額は各市区町村の定めた基準によります。

所得割

不動産を売却して譲渡所得が出た場合、この所得割が増加します。

所得割は、以下の計算式で計算します。

(「前年の総所得金額」−「基礎控除(33万円)」)×税率

均等割

均等割は、個人個人への課税であり、税額×世帯内の国保加入者数(被保険者数)で計算されます。

平等割

平等割は、1世帯ごとにかかる税額です。

資産割

資産割は以下の方法で計算します。

加入者の固定資産税額(土地・家屋)×税率

近年は、固定資産税額に応じて計算される資産割は、二重課税の批判もあり、徐々に資産割を採用する自治体は少なくなっています。

不動産売却の保険料への影響を数字でイメージする

上述の通り、国民健康保険のうち医療分を算出する要素の一つである「所得割」が、保険料に影響します。

(「前年の総所得金額」−「基礎控除(33万円)」)×税率

この前年の総所得金額には譲渡所得も含まれるので、不動産売却によって譲渡所得が出たら所得割が増えて、結果的に保険料が増えるという仕組みになっています。

税率・税額ともに各自治体によって異なるため全ての人に適用する計算例は出せませんが、ここでは通常の保険料と不動産を売却した場合の保険料をイメージしやすいように、具体的な事例で確認していきましょう。

例えば、3,000万円で購入したマンションを3,500万円で売却したとして、減価償却費は500万円、譲渡費用は100万円だったとします。

譲渡所得=譲渡収入金額 −(取得費+譲渡費用)=3,500万円-(3,000万円-500万円)−100万円=400万円となります。

仮に3,000万円の特別控除が使えなかったとすると、課税譲渡所得は400万円となります。

仮に前年の総所得金額を300万円、東京都足立区と同じ税率7.32を採用したとして、

■不動産売却がない場合の所得割額
(「前年の総所得金額」−「基礎控除(33万円)」)×税率=(300-33)×7.32=19万5444円

■不動産売却によって課税譲渡所得が400万円になった場合の所得割額
(「前年の総所得金額」−「基礎控除(33万円)」)×税率=(300+400-33)×7.32=48万8244円

となり、不動産売却がある場合とない場合とて約30万円も金額が変わってきます。

この所得割の計算のあと、さらに均等割などの税額を足し合わせて医療分を算出して、後期高齢者支援金分、40~64歳の人であればさらに介護保険分を足し合わせて、最終的な国民健康保険料が出ます。

なお、国民健康保険には医療分、後期高齢者支援金分、介護保険分それぞれに年間の限度額(医療分であれば最高で58万円程度)が定められています。

そのため、もしも不動産売却の影響で保険料が数百万円という金額になった場合でも、国民健康保険料の請求金額が数百万円になるということはありません。

健康保険料と特別控除の関係

ここまでは譲渡所得と保険料の関係について解説してきましたが、実際の譲渡所得の計算には特別控除を利用するケースが多いです。

ここからは特別控除と健康保険料の関係について解説していきます。

譲渡所得と特別控除の計算方法

実際には、マイホーム(居住用財産)を売却したからといって保険料が値上がりするケースはあまりありません。なぜなら3,000万円の特別控除があるためです。

不動産売却が健康保険料に直接影響を与えるケースは、マイホームを売却して利益が出た場合、言い換えれば譲渡所得がある場合です。

しかしこの譲渡所得には、多くの場合、3,000万円の特別控除を適用することができます。つまり譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得はゼロになり、健康保険料への影響もないということです。

課税譲渡所得の計算は、以下の計算式を使います。

課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除額

上述した3,000万円で購入したマンションを3,500万円で売却したケースでは、譲渡所得は400万円だったので、

課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除額=400万円−3,000万円=−2,600万円

よって課税譲渡所得はゼロになり、このケースにおいては、翌年の健康保険料には不動産を売却した影響はありません。

3,000万円の特別控除の利用要件

3,000万円の特別控除を利用するための主な要件については以下の通りです。

所有期間は関係なく、また3年に1度しか適用できません。

  • 売却する住居が、自分が住んでいる居住用住居であること
  • 売却する相手が夫や妻など配偶者や親、子、同族会社等でないこと
  • 売った年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと

3000万円の特別控除の他にも、譲渡所得の税率を減らしたり、譲渡で損失が出たりした場合にその他の所得と通算して税金が安くなる特例などもあります。

全ての特例は、確定申告をしないと適用されないので注意しましょう。

後期高齢者や被扶養者が不動産売却した場合は?

後期高齢者や被扶養者が不動産売却した場合は注意が必要です。

それぞれのケースについて確認していきましょう。

後期高齢者が不動産を売却した場合は国民健康保険者と同じ扱いになる

後期高齢者が不動産を売却した場合、国民健康保険者の不動産売却と同様に、翌年の保険料(後期高齢者医療制度保険料)が値上がりする可能性があります。

後期高齢者医療制度は、75歳(寝たきり等の場合は65歳)以上の方が加入する保険制度です。

後期高齢者医療制度の保険料の計算方法も国民健康保険と同じで、所得割が関係してきます。所得割は前年の総所得金額によって決まります。
総所得金額には譲渡所得も含まれるので、不動産売却によって譲渡所得が出たら所得割が増えて、保険料が増えます。

しかし、後期高齢者医療制度に加入している人も、譲渡所得の計算は同じです。

そのため、売却して得た収入金額から、売却した不動産を取得した際の取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得がゼロであれば課税されません。課税譲渡所得が増えないので総所得金額に影響がなく、保険料への影響もありません。

また譲渡所得があった場合でも、要件がそろえば3,000万円の特別控除を利用することで課税譲渡所得を減らす、もしくはなくすことができます。

被扶養者は扶養から外れる可能性がある

サラリーマンなどの健康保険(協会けんぽ、組合健保)や公務員などの共済組合保険の被扶養者が、不動産を売却した場合、扶養から外れる可能性があります。扶養には税金と健康保険の扶養がありますが、ここでは健康保険の扶養に話を絞って解説していきます。

例えば夫が健康保険もしくは共済組合保険に加入している場合、保険料は自分が半分、会社・団体が半分出している状態になっています。

この際に妻の年収が130万円以下の場合、被扶養者として、保険料を負担せずに夫と同じ保険に入ることができます。健康保険では、所得ではなく収入が判断基準になるので注意が必要です。

しかし、被扶養者の妻が不動産を売却して年収が130万円を超える場合、妻は扶養から外れなければいけない可能性があります。
可能性があるというのは、保険組合の規定によって対応が異なるということです。

多くの場合は、不動産を売却して得た収入のような継続的な収入ではない場合、一時的な収入であるとみなされる場合は、扶養から外れなくても良いとされているようです。被扶養者で不動産を売却する場合は、必ず健康保険組合に確認しましょう。

扶養を外れる場合は、国民健康保険への加入が必要です。仮に一旦扶養から外れてしまった場合でも、被扶養者の条件が整えばまた被扶養者に戻ることはできます。

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まとめ

ここからは不動産売却と健康保険料についてまとめていきます。

記事のおさらい

  • 国民健康保険の場合、不動産売却によって翌年の健康保険料が上がる可能性がある
  • 健康保険、共済保険は給料を基にした「標準報酬月額」を使って保険料が決定される
  • 国民健康保険の保険料は世帯の所得をベースに保険料が決まる
  • 実際は不動産売却によって譲渡所得が出るケースは少ない
  • 譲渡所得があった場合も、居住用住居である場合は3,000万円の特別控除を利用すると譲渡所得がゼロになるケースが多い
  • 後期高齢者医療制度に加入している人も国民健康保険の人と同様に不動産売却で保険料が上がる可能性はある
  • 被扶養者の人が不動産売却した場合、収入増によって扶養から外れる可能性がある

不動産を売却すること自体が初めての場合、不動産取引、そしてその後の確定申告までは意識しますが、健康保険料について考慮することができる人は少ないです。

記事内で解説した通り、特に国民健康保険に加入している人は保険料が上がる可能性があるので注意が必要です。

今回の記事が不動産売却と健康保険料の関係を理解する上でお役に立てば幸いです。

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不動産ライター兼不動産経営者 監修 中村裕介 宅地建物取引士、保育士

1983年福岡生まれ。上海復旦大学卒。 商社、保育園、福祉施設での勤務を経て、現在は不動産の記事を中心に手がけるライター兼不動産経営者。実際に店舗・住宅を提供している立場から、不動産に関する記事を執筆中。 趣味はフットサル、旅行、読書。美容と健康のために毎日リンゴ人参ジュース飲んでます。

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