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不動産ライター兼不動産経営者 監修 中村裕介 宅地建物取引士、保育士
土地を分割して売却したいと思っても、何から手をつければいいのかわかりませんよね。
土地を分割して売る場合は、通常の土地売却に比べて行う作業や手続きが増えます。
ただ土地を分ければ良いわけではなく、分け方や登記など専門的な作業が必要になります。また、不動産知識の不足から法律違反になってしまうケースもあります。
この記事では次のような疑問や質問について答えが得られます。
この記事ではこんな悩みを解決します!
- 土地を売却したいけど、分割して売るってできるの?
- 土地売却の方法が全くわからない…
- 土地を分割するって自分でやってもいいの?
この記事では、自分の土地を分割して売却したい人のために、土地を分割して売却するために必要な手続きのポイントについてわかりやすく解説していきます。
この記事の目次
土地の「分割」と「分筆」の違い
土地を2つ以上に分ける行為を表す言葉に、「分割」と「分筆」があります。
この2つの違いは不動産登記をするかどうかです。登記簿上で土地が分かれる場合は「分筆」といいます。
土地を分けた後、売却する場合は必ず「登記」が必要です。
なぜなら、いくら自分で境界線を決めて目印を作り分割しても、登記上では1つの土地のままだからです。売却したくても、1つの土地として売るしかないのです。土地を分けて販売する場合は、必ず分筆が必要になることを認識しましょう。
混乱をさけるためにも、この記事では土地を分けることを「分筆」という表現で統一します。
注意!個人売主は複数の土地を売却することができない
土地を2つ以上に分けた後、分けた複数の土地をすべて一般市場に売却することはできません。
なぜなら個人が2つ以上の土地を売却する場合、宅地建物取引業法の「業として行う」にあたる可能性があるためです。宅地建物取引業を行うためには、国土交通大臣もしくは都道府県知事の免許が必要です。
つまり、何も知らずに複数の土地を売却すると、“無免許で宅地建物取引業をしている”となってしまう可能性があります。
「ビジネスではなく、ただ個人が売却するだけなのに???」
そんな声が聞こえてきそうです。たしかに、一般的な感覚では、個人の売買は事業ではないイメージがありますよね。
しかし、個人が2つ以上の土地を売却する場合、2回以上の販売行為を行うので「取引の反復継続性」があるとみなされ、事業性が高いと判断されます。
不動産取引において事業性が高いものは、宅地建物取引業法における「業」にあたるとされています。
「取引の継続性」については、何年続けたら継続性がある、といった明確な期間は定められていません。そのためか、インターネット上では1年以上の間隔が空けば売却可能、などといった情報も散見されます。
しかし、宅地建物取引業法において1年の期間と規定されているわけではありません。1年以上の間隔が空けば売却可能という情報は法的根拠がなく、グレーな取引行為となります。
個人は土地を分割した後、2つ以上の土地を一般市場で売却できないことをしっかり認識しておきしましょう。
※参考サイト:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)(PDFファイル)
土地を分筆して売却する際にやるべき2つのポイント
土地を分筆して売却する際には、下記2つのポイントを押さえる必要があります。
- 本当に分筆するべきか、複数の不動産会社の意見を聞く
- 一般市場で売却する もしくは 不動産会社に買取を依頼する
土地売却に失敗しないために、それぞれのポイントについて確認していきましょう。
①本当に分筆するべきか複数の不動産会社の意見を聞く
分筆しなければならない特別な事情がある場合を除いて、売却のために分筆するべきか複数の不動産会社の意見を聞くことは重要です。
なぜなら、分筆には平均で3ヶ月以上の時間と数10万円の費用がかかるからです。また分筆するよりも1つの土地として売却した方が良いケースもあり得ます。
もちろん、住宅地用としては広すぎる土地を適切な広さの面積に分けることで売りやすくなるなど分筆のメリットはあります。
大切なのは、自分の考えだけで最初から分筆すると決めてしまわずに、土地売却のプロである不動産会社の意見を参考にすることです。
②一般市場で売却するか不動産会社に買取を依頼するか選ぶ
土地の売却に限らず、不動産を売却する方法は「一般市場で売却する」「不動産会社に買取を依頼にする」の2つがあります。
一般市場での売却とは、土地を売りたい売主が、不動産会社の仲介により、マイホームを建設するための土地が欲しいといった一般の人へ売却するケースのことです。
一方の不動産会社の買取とは、売主から不動産会社へ土地を直接売却する取引形態のことです。
買取の場合、売却価格は一般市場での売却額の6割から7割程度です。買取のメリットは取引のスピードが早い点で、土地が測量や登記が済んでおり売却可能な状態であれば、早ければ1週間程度での売却が可能です。
土地が広すぎたり、人口の少ない地域、住宅地向きでない場合など、一般市場での売却が難しい場合は、不動産会社による買取も検討してみましょう。
また土地が広く年間の日照量が多い土地の場合、太陽光発電の用地に向いている可能性があるため、太陽光業者への売却という手段もあります。
土地の分割(分筆)の流れ
ここでは土地の分筆の流れについて解説します。
①土地家屋調査士に分筆を依頼する
土地の分筆は、土地家屋調査士に依頼して行うのが一般的です。
土地の分筆の作業は、大きく「測量」と「分筆登記」に分けられます。
自分でも土地の測量と分筆を行うことは不可能ではありません。しかし専門的な知識道具が求められるため、自分でやるのは現実的ではありません。
ほとんどのケースでは土地家屋調査士に依頼するのが妥当です。
②分筆前の土地の境界が確定しているかを確認する
土地の分筆は、分筆前の土地の境界が確定しているかどうかをまず確認します。
筆界確認書(境界確認書)という、隣地所有者と共に土地の境界線について合意している書類があれば、確定していると判断できます。
土地を分ける際、周りの土地との境界がはっきりしていれば、分筆のための測量と分筆登記を行います。
境界がはっきりしていない場合は、分筆の測量と登記の前に、隣地との境界を確定させる測量(境界確定測量)を行わなければなりません。
③境界確定測量を行い、土地の境界を確定させる
土地の境界をはっきりさせるために、法務局や役場で登記簿や公図、地積測量図などの資料を確認します。
その後、現地調査して仮の境界線を決めます。ここで分筆のための仮の境界線も決めます。
そして、隣地所有者などの立ち会いのもとで境界線と分筆する境界腺(分筆線)を確定し、境界の目印となる境界標を設置します。
それから、合意が取れた証明となる境界確定書を作成します。
元の土地の境界がはっきりしている場合は、土地の境界の再確認を行った上で、分筆のための調査と分筆線の確定、登記のための地積測量図を作成します。
登記後に登記済証を受領して分筆登記は終了です。
分筆のための手続きの流れは、簡単にまとめると下記の通りです。
- 元の土地の境界がはっきりしている→分筆のための測量+分筆登記
- 元の土地の境界がはっきりしていない→境界確定作業+分筆のための測量+分筆登記
書類の種類 | 概要 |
---|---|
分筆登記のための委任状 | 申請する人から土地家屋調査士への委任状 |
地積測量図 | 分筆する土地の面積・寸法といった測量情報が記載されている書類 |
境界確認書(筆界確認書) | 隣地所有者との合意が取れていることを証明する書類 |
土地の分割(分筆)の注意点
分筆する際に注意したい点は、境界線の決め方です。
分筆前の境界が確立していない場合は、隣地所有者の合意が必要です。隣地所有者との交渉が長引いた場合は数ヶ月どころか半年以上もかかるケースもあります。
また、分筆の際の土地の形状によって土地の価値が変わるというのも注意すべき点です。
建物を建てる際には、4m以上の土地に2m以上接する必要がある接道義務というものが建築基準法によって決められています。この条件をクリアして土地を分筆した場合、道路と接している細い通路と家が建っている広い敷地が繋がり、旗が立っているような形の土地(旗竿地)となる可能性があります。
旗竿地の場合、通路が狭いことから駐車ができない、家を建てる際に重機が通らず手作業になり建築費がかさむといったデメリットがあり、土地の価格が下がる傾向にあります。ただし、旗竿地にはプライベートが守られる、外観を気にしない分、内装に費用がかけられるといったアピールポイントもあります。
分筆をスムーズに行うためには土地の売却に実績がある不動産会社を選ぶことが重要です。経験豊富な不動産会社であれば、隣地所有者との対応も慣れており、また分筆後の土地の販売についても手腕を発揮してくれます。
土地の分割(分筆)の費用
境界確定状況 | 費用の目安 | 分筆にかかる期間 |
---|---|---|
確定している | 最低10万円 | 10日程度 |
確定していない | 数10万円~100万円 | 3ヶ月~半年 |
分筆にかかる費用は、主に土地家屋調査士への報酬と分筆登記の実費となります。分筆にかかる費用の大半は、境界確定のための調査・測量・折衝にかかる費用です。最低で10万円、多い場合は数十万〜100万円以上かかります。
分筆登記にかかる費用は、登録免許税として1筆ごとに1,000円となります。2筆に分筆した場合は2,000円、3筆に分筆した場合は3,000円となります。
測定の費用は、分筆前の土地の境界がわかっているかどうかで、費用と必要な作業時間が大きく異なります。
境界が確定している場合、費用の最低価格として10万円程度で、着手から10日間程度で手続きは終わります。
境界確認書、地積測量図など土地の境界を確定させる資料がなく、境界確定から行うケースの場合、数10万円~100万円程度の費用がかかります。
境界の確定日数に関してはケースバイケースですが、3ヶ月程度から半年もかかる場合もあり、隣地の所有者の同意を得られない場合はさらに長引く可能性もあります。
分割したら…一般市場での土地売却の流れ
ここからは、一般市場での土地売却の流れについて解説します。
自分で土地の測量・分筆登記を行う場合、③の作業工程が一番はじめになります。
①複数の不動産会社に土地の査定を依頼する
複数の不動産会社に土地の査定を依頼します。査定を依頼する際に、「土地の一部を分けて売却したい」旨を伝えます。
複数の不動産会社へ査定を依頼する場合、不動産一括査定サイトの利用がおすすめです。
一括査定サイトは地域や面積を入力すればすぐに査定できます。面積が確定していないので、およその面積の数字を入れて、備考欄に「土地の一部を売却したい」旨を記載しましょう。
一括査定サイトから査定依頼した後、複数社からの連絡がきます。各社によって分筆に関する反応・アイデアが異なります。自分の要望に合った形で話を進めてくれる会社を選びましょう。
不動産売却を検討している方は、「RE-Guideの不動産一括査定」を使って無料で物件を査定してみてください。
なお、通常の土地売却の場合は、自分で価格相場を把握した上で査定依頼をすべきです。しかし、売却予定の土地の面積が決まっていない段階では、調べようがありません。土地の一部を売却するケースでは、「自分で価格相場を把握する」という工程は必然的に省かれます。
②不動産会社の選定を行い、媒介契約を結ぶ
土地の売却を不動産会社に依頼するためには媒介契約を結びます。
媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類がありますが、おすすめは専任売却媒介契約です。
土地の分け方は、媒介契約後に不動産会社と相談して決めるべきです。なぜなら不動産会社は売却のプロであるため、どのような条件の土地が売れやすいかを把握しているからです。
信頼できる不動産会社の選び方については記事後半で解説します。
③土地の測量と分筆登記を行う
土地の分筆は、不動産会社から紹介を受けた土地家屋調査士に依頼する方がスムーズです。
しかし分筆の予算を抑えたい場合は、自分で複数の土地家屋調査士の事務所に相見積もりを取りましょう。
土地家屋調査士が決まったら、境界確定等の作業を行い、分筆登記を行います。分筆登記が終われば販売開始です。
④販売活動を行う
不動産会社により土地の販売活動が行われます。売却予定の土地の広告作成、チラシ配布、HP掲載などの販売活動を行います。
販売活動のほとんどは不動産会社が行います。土地の売主としての作業は、土地の購入検討者が出た際の現地確認の対応です。現地確認の対応は不動産会社の担当者が行うため、売主の立ち会いは必須ではありません。
しかし売主同席での説明があった方が買主の心証は良くなります。土地の履歴、なぜ売ることにしたのかなど、土地に関する質問等に関してはしっかりと答えましょう。
⑤価格交渉・売買契約・手付金の受け取り
土地購入の希望者が出たら価格交渉に入ります。
売買価格に関して売主、買主双方が合意したら売買契約に進みます。売買契約の際に、買主から売主へ手付金が支払われます。
⑥残代金の決済・土地の引き渡し・不動産登記
土地の引き渡し日は、土地の引き渡しのほか、売買価格から手付金を差し引いた残代金の決済と所有権移転の不動産登記が行われます。
多くのことを一度に行う日であるため、不動産会社に確認して必要書類などの事前準備を万全にしておきましょう。
良い不動産会社選びの基準
土地を分筆して売却する方法は、売主の分けたい土地の形と、実際に市場で売れる土地を両立させる必要があります
土地家屋調査士は測量と登記の専門家ですが、どのように土地を分ければ売りやすいなどのアドバイスはしてくれません。どのように土地を売却するかについては、不動産会社のアドバイスが必要です。
信頼できる不動産会社を選ぶポイントは、まず土地販売の実績のある会社であること。そして売主側の事情や意見を聞く姿勢があるかどうかです。
売主は土地の売却などやったことがなくて普通ですが、このように分けたい、このように売りたいという希望はあります。売主側の希望をきちんとヒアリングしてくれる姿勢が重要です。
売主の希望を現実的な形にする、分筆から売却までのプランを考えてくれる会社を選びましょう。
不動産会社との媒介契約でおすすめは専任媒介契約
媒介契約とは、土地の売却を不動産会社に依頼する際に結ぶ契約のことです。
媒介契約には3つの種類があり、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3つの種類で、おすすめは専任媒介契約です。
専属専任媒介と専任媒介は特定の一社と、一般媒介は複数の不動産会社と媒介契約を結びます。
複数社との契約をする一般媒介が有利なように感じますが、専属専任媒介と専任媒介は、全国の不動産業者が利用するネットワークシステム「レインズ」に登録義務があります。レインズでは不動産会社間で売却する土地の情報を共有されるので、専属専任媒介や専任媒介も他の会社から購入希望者が紹介される可能性があります。
一般媒介は、他社が売買を成立させたら利益にならないので、不動産会社が販売に注力しない可能性があり、おすすめしません。
専属専任媒介と専任媒介の違いは、自己発見取引ができるかどうかです。専属専任媒介契約では、自己発見取引は認められません。契約中に売主が物件を買う人を見つけても、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
そのため専属専任媒介より自由度の高い専任媒介契約がおすすめです。媒介契約の有効期間は最大3ヶ月です。
まとめ
それでは、土地を分けて売却する方法について再確認しましょう。
記事のおさらい
- 「分割」と「分筆」の違いは不動産登記をするかどうか。分筆は不動産登記を伴う作業のこと。
- 基本的に登記するので、土地を分けて売却する場合は分筆を行う
- 土地を2つ以上に分けた後、分けた複数の土地をすべて一般市場に売却できない
- 分筆する際に注意点は境界線の決め方。不動産会社と相談して慎重に決める必要がある
- 良い不動産会社は土地分筆して売却した実績があり売主の意見を尊重して現実化する力のある会社
- 媒介契約は自由度が高く不動産会社の注力を期待できる専任媒介契約
土地を分割して売却する場合、自分がこんな風に分けたいという希望と、売却の目的に沿った分け方の落とし所を探る必要があります。
そのためには不動産会社との連携が不可欠になります。不動産会社を選ぶ際は、分筆から売却までのしっかりしたプランを立ててくれる不動産会社を選びましょう。
今回の記事内容が土地を分割して売却する際の助けになれば幸いです。
不動産ライター兼不動産経営者 監修 中村裕介 宅地建物取引士、保育士
1983年福岡生まれ。上海復旦大学卒。 商社、保育園、福祉施設での勤務を経て、現在は不動産の記事を中心に手がけるライター兼不動産経営者。実際に店舗・住宅を提供している立場から、不動産に関する記事を執筆中。 趣味はフットサル、旅行、読書。美容と健康のために毎日リンゴ人参ジュース飲んでます。